【2022年4月1日~】18歳で10年パスポートを申請できるようになり、重国籍者の国籍選択期限が22歳→20歳になりました。詳しくはこちら

二重国籍で国籍選択しなくても催告は受けないって本当? 実際に調べてみた

国籍選択の催告は今まで一度も行われたことがないのか?その理由は?今後催告が行われる可能性があるのか?

こんにちは!ドイツ在住のKokoです。

インターネットで国籍選択関連の記事を読んでいると、よく、

「今まで一度も法務大臣による催告は行われたことがないらしい。」

「今後も催告はないだろうから、国籍選択をしなくても問題ない。」

というような記事を目にします。

「催告(さいこく)」というのは聞き慣れない言葉ですが、国籍選択制度に関して簡単に言うと、法務大臣が国籍選択期限を過ぎた重国籍者に対して、

「国籍選択期限を過ぎていますよ。1か月以内に国籍選択をしてくださいね。1か月以内に国籍選択しないと日本国籍を失いますよ。」

という通知をすることです。

私のように国籍選択の催告の実際のところが気になる人がいるかもしれないと思いまして、本記事では、以下の内容について知るため、過去の国会本会議や委員会等の議事録(2009年~2021年)をたどって、関連する質問・答弁をまとめてみました。

  • 本当に、過去に一度も、国籍選択の催告が行われたことがないのか?
  • 法務省のどういう考えに基づき、これまで催告が行われてこなかったのか?
  • 催告が行われたことがない事実について、国会ではこれまでどういった議論がなされてきたのか?
  • 今後催告が行われる可能性は本当にないのか?
Koko

私自身のメモのために作ったような、ほぼ関連議事録からの引用記事です。

クリックできる目次

国籍選択の催告についての法律を見てみよう

国籍選択の催告については、国籍法第15条に定められています。

法務大臣は、国籍選択期限内に国籍の選択をしない者に対して、書面(書面が無理なら官報掲載)にて、国籍選択をすべき旨を催告(通知)できるとされていて、催告を受けた日から一か月以内に国籍の選択をしなければ、自動的に日本国籍を失うとされています。

 (国籍の選択)

第十四条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。

第十五条 法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。

2 前項に規定する催告は、これを受けるべき者の所在を知ることができないときその他書面によつてすることができないやむを得ない事情があるときは、催告すべき事項を官報に掲載してすることができる。この場合における催告は、官報に掲載された日の翌日に到達したものとみなす。

3 前二項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から一月以内に日本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う。(以下、省略)

それでは、次章から、過去の国会本会議や委員会等の議事録(2009年以降)を調べて見つけた、国籍選択の催告関連の質疑応答をご紹介します。

【2009年4月】推定58万人の重国籍者。過去に国籍選択の催告例なし。法改正も含めさらなる議論が必要

<赤池誠章 衆議院議員>

お伺いしたところによると、昭和六十年の国籍法の改正以来、両系血統主義のもとで、五十八万人もの方が日本国内において重国籍者だろうと推定をなさっているわけですね。

国籍唯一の原則の中で、日本国籍もしくは外国籍、どちらかを唯一取ってくださいというのが法の趣旨であり、そのために催告制度という制度を設けているわけでありますが、法改正以来二十四年間、一度も催告制度をとらない。

自主的な判断に任せるといって何を通知なさっているかといえば、ポスター、リーフレット、パンフレットをつくっていますと。

これで果たして、法務行政として、国籍唯一の原則といいながら、そのまま野放しにしていると言われてもおかしくないんじゃないでしょうか。

(中略)

国籍選択というのは、個々にとっては当然大変重い選択であります。

最近では、有名な事例でいえば、WBCで活躍した日本ハムのダルビッシュ有投手が、イラン人のお父さん、お母さんは日本人ということで、国籍選択をなさったということも報道されているところでありまして、大変重い選択というのは重々承知なわけであります。

ただ、その一方で、法務行政として、国籍唯一の原則、これは、国家というのは自国民を保護するという義務があり、また、国民にとっても、アメリカの国籍法に書かれているとおり、国家に対する永世忠誠義務を負う、そういった関係にあるのではないかというふうに思うわけでありまして、これは平時、まさに平和だからこそ許される部分。

しかし、最初に質問させていただきました北朝鮮のミサイル発射事件、これがまさに、拉致問題を初め、有事ということが相当日本国にとっては言われているわけであります。

他国の中国やロシアも含めて、反日的な国々に囲まれた日本の中で、こういった懸念というのは全く絵そらごとではないというふうに感じている中で、具体的に、仮に北朝鮮と有事になったら、北朝鮮籍と日本籍、重国籍者の方々はどうなるのか、どう国家が取り扱うのかということは近々の問題だというふうに思っております。

そうなったときにそうするではなくて、やはり日ごろから、今、一万人の方々が重国籍者で、約千人、二千人の方が自発的に選択している、八千人の方がどんどんどんどん積み上がって、その数が五十八万人だと。

減りはなく、これはどんどんふえていくわけですね。

そういった問題をそのまま放置していくということ自体が、法務行政の不作為、それが、先ほど冒頭からお話ししている現状追認型、法というのは建前で、現状を追認するのみだということで、国民の不信が生まれることにつながってくるような気がして仕方がございません。

ぜひ、入管行政、そしてこの重国籍者の問題に関して、当然、自発的に、意思を尊重するといいながら、ただそれだけでいいのかということを踏まえて、法務当局としてきちっと検討をしていただきたいというふうに思います。

<倉吉敬 法務省民事局長>

ただいまの国籍選択制度、その催告制度をどうするのかということも含めて、重国籍の問題に関しては非常に難しい問題が多いわけでございます。

今委員の御指摘になったことは、それぞれ重い問題であるということは私も十分に承知しております。

これも委員も御承知のとおりでありますが、この点も含めて、重国籍の問題については、自民党法務部会の国籍問題に関するプロジェクトチームでも御議論をいただいている。

しかし、そこでもさまざまな御議論があって、いろいろと深い検討をいただいていると承知しております。

私どもとしては、これまでも国籍法につきましては、その時々の国際情勢に合わせて、それから、日本の国内の国民感情等も考慮しながら、適切に改正をしてきたつもりでございます。

今後とも、そういった所要の法改正を行うということも含めて、引き続き対処しなければいけないと思っておりますけれども、そのためにも、この種のことをめぐる議論が一層これからも深まっていくということをぜひ期待したいと思っております。

引用:国会会議録検索システム「第171回国会 衆議院 法務委員会 第6号 平成21年4月17日

【2009年5月】事実上二重国籍を認めていることになるのではないか、催告制度に問題があるなら改正すべきという稲田議員の追及。法務省のスタンスが改めて明らかに

<稲田朋美 衆議院議員>

法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民が国籍を選択しなければならない時期になったにもかかわらず選択をしないときには、書面で催告ができるということになっています。

ところが、この催告を一度もなさったことがないということを聞いて、私は驚いているわけであります。

我が国は二重国籍を認めていないにもかかわらずこの催告制度を一度も行わないというのは、まさに行政の怠慢で、もっと言うと、不作為によって事実上二重国籍を認めているという、そんな運用をしていることになるのではないかと思いますけれども、民事局長の見解をお伺いいたします。

<倉吉敬 法務省民事局長>

ただいま委員御指摘のとおり、法務大臣がこの法律に基づく国籍の選択をすべきことを催告した例というものは、これまでございません。

これは、催告を行った場合は、催告を受けた日から一カ月以内に日本国籍を選択しなければ、自動的に日本国籍を喪失することとなるわけでありまして、このことが、重国籍者本人のみならず、その親族等関係者の生活その他全般にわたって極めて重大な影響を及ぼすものであることから、慎重に対処する必要があるからであります。

国籍選択義務の履行は重国籍者の自発的な意思に基づいてされるのが望ましい、こう考えておりまして、法務省としては、催告をするまでもなく重国籍が解消されるよう、国籍選択制度の周知に努めているところであります。

ただし、ただしでございますが、将来的に、重国籍の弊害が現実化し、我が国の国益が著しく損なわれるようなケース、このようなケースが生じた場合には、催告の必要性というものをきちっと検討していかなければならない、このように考えております。

<稲田朋美 衆議院議員>

重国籍の弊害が現実化して国益が侵害されるおそれがあるというのは、一体どういう場合を想定されているんでしょうか。

<倉吉敬 法務省民事局長>

一つの典型としては、犯罪に利用されるというケースがあろうかと思います。

例えば、ある外国で、Aという名前の旅券を使用して日本に入ってくる。

日本に入ってきて、重国籍ですから、今度は日本の、例えば甲という名前を使って、重大な犯罪に関与する。

そしてまた、外国のAという名前の旅券を使用して出国する。

このようなことを繰り返していた者について、そのような行為が判明した、日本の裁判所で有罪の判決を受けた、このようなことがある場合には、その者について催告をして、法律上の手続を行うということが考えられると思っております。

<稲田朋美 衆議院議員>

犯罪に利用されない限り二重国籍は黙認をしているというように今の答弁では聞こえるわけでありまして、もしこの法律に問題があるのであれば、例えばそういった催告をして国籍を失うまでの期間を延長するとか、そういった議論をするならともかく、犯罪にならない限り全くこの規定を適用しないというのは、私はやはりおかしいんじゃないかなと思っております。

私は、国会で議論して立法した法律を忠実に行うのが行政の役割であって、勝手なと言ったら失礼ですけれども、余りにも抑制をするというのはおかしいと思います。

もし本当にその法律が時代に合わないとか問題があるというのであれば、もう一回国会で審議をして、そして改正するのが筋だと思っております。

引用:国会会議録検索システム「第171回国会 衆議院 法務委員会 第10号 平成21年5月12日

<伊達忠一 参議院議長>

四 国籍法第十四条第一項にいう「外国の国籍を有する国民」は現時点で何人いると政府は把握しているか。

<安倍晋三 内閣総理大臣>

四について 戸籍法に定める各届出によっては国籍法第十四条第一項の外国の国籍を有する日本国民であるかを確実に把握できるものではなく、また、戸籍法に定める各届出が適切に行われていない場合も考えられるため、政府において、外国の国籍を有する日本国民の数を正確に把握しておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。

<伊達忠一 参議院議長>

五 国籍法第十四条第二項にいう「選択の宣言」をした者は現時点で何人いると政府は把握しているか。

<安倍晋三 内閣総理大臣>

五について お尋ねについては、国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律(昭和五十九年法律第四十五号)により国籍選択制度が導入された昭和五十九年度から平成二十七年度までの間に四万八千六百九十一人が国籍法第十四条第二項の規定による日本の国籍の選択の宣言を行い、戸籍法第百四条の二の規定に基づく国籍の選択の届出を行ったと把握している。

<伊達忠一 参議院議長>

六 国籍法第十五条第一項が規定する法務大臣の「催告」はこれまでに何件実施されたか。

<安倍晋三 内閣総理大臣>

六について 現在までに国籍法第十五条第一項に規定する催告を行ったことはない。

引用:国会会議録検索システム「官報(号外)平成二十八年十月十一日 参議院会議録第四号 質問主意書及び答弁書」p.12

ここで言われている「国籍法第14条第二項の規定による日本の国籍の選択の宣言」とは、大坂なおみ選手が行ったように、「国籍選択届」を出し、日本の国籍を選択し外国籍を放棄することを宣言することです。その結果、国籍選択という法律義務は果たしたことになりますが、外国籍の離脱については努力義務にとどまり、外国籍を離脱しないことについての罰則もないので、事実上重国籍のままの人がたくさんいます。

【2018年3月】変わらない議論(さらなる議論が必要)

<阿久津幸彦 衆議院議員>

国籍法十四条、十五条で、二十二歳になるまでに国籍を選択する国籍選択届の提出が求められているわけなんですけれども、これは、最終的には法務大臣の御判断になるんですが、ほっぽらかして国籍の選択届を出さないでいても、これまでに催告を受けて処罰されたというか日本国籍を奪われた例はないというふうに聞いているんです。

これは、憲法二十二条に、何人も、外国に移住し、国籍を離脱する自由を侵されないとありますので、国籍については離脱は個人の自由意思でなされるべきと明確にされていますので、慎重な運用がなされているのかなというふうにも考えているんですけれども。(中略)

<河野太郎 国務大臣>

国籍に関しては、これは法務省に聞いていただかなければいけないわけでございますが、これだけ時代が国際化しているという事実の中で、国籍についてさまざまなお考えが広がっているというのも現実にあろうかというふうに思いますし、国際結婚された方々のお子さんの国籍の問題について、私もいろいろと陳情を受けたりということもございました。

日本の国際的な力というものをふやしていく中で、どういうふうに国籍を考えていくのかというのは、これは外務省だけでなく法務省その他関係府省と連携して考えてまいりたいと思います。

引用:国会会議録検索システム「第196回国会 衆議院 外務委員会 第4号 平成30年3月23日

河野太郎衆議院議員の公式ブログに、ご自身の二重国籍に対する考え(2022年1月15日)がアップされていますのでご参考までに。閣僚や裁判官などの公職には外国籍放棄を義務付けるべきだと強調しつつ、現行の国籍選択制度、日本国籍自動喪失規定を柔軟にすべき、議論の余地があると述べられています。

【2021年12月】日本政府が重国籍者を把握できない理由、国籍選択期限超過者に通知をやめた理由。小野田議員(元二重国籍)の自らの経験にもとづくやりとり

以下の国会でのやりとりには「催告」の話は出てきませんが、「催告」と関係のある、日本政府が重国籍者を把握できていない事実とその理由国籍選択期限超過者への通知停止の理由国籍選択についての法務省の考え方などがわかるやりとりとなっていますので引用します。

ちなみに、質問者の小野田紀美(きみ)参議院議員(自民党。2016年から現職)は、アメリカ人の父と日本人の母をもつ二重国籍者でしたが、参院選立候補前の2015年10月(国籍選択期限を過ぎた32歳の時)に国籍選択届を出すことにより日本国籍を選択し、2017年5月に日本国内で米国籍離脱手続きを完了されています。

<小野田紀美 参議院議員>

日本に二重国籍者、多重国籍者というのは何人いるでしょうか。

<金子修 法務省民事局長>

日本国民であってそれに加えて外国の国籍をも有する人の数ということですが、結論を先に申し上げますと、外国の国籍を有する日本国民の数を正確に把握するということが難しい状況にございます。

その理由ですが、外国国籍を有するかどうかという問題は、我が国の政府として独自に認定する立場にはなく、当該外国がその法令や解釈に従って判断されます。

例えば、日本人であって外国において外国の国籍を取得する原因としては、出生とか認知とか婚姻とか、その国の制度によっても違いますが、そのようなきっかけとなるような事実関係を日本として正確に把握できるという状況になっていないということでございます。

また、外国、今度、外国の国籍を喪失するという場合も、必ずしも日本に連絡がされるというわけではないので、二重あるいは多重国籍の日本人がどの程度いるかということを法務省として正確に把握できていない状況にございます。

<小野田紀美 参議院議員>

日本では、法律で厳格に二重国籍というのは禁止されています。なんですけど、日本国民の多重国籍の状況、情報の把握も管理もできない。それは今難しい状況というのは御説明いただきましたけれども、把握と管理できずして法律を守らせることというのはできないと思うんです。

これやっぱり是正していかなくてはいけないと思うんですけど、法務大臣、いかがでしょうか。

<古川禎久 国務大臣>

我が国の国籍法では、基本的に重国籍を認めておりません。そして、重国籍者につきましては、一定の期限までにいずれかの国籍を選択するよう国籍選択義務というものを課しております。

しかしながら、ただいま民事局長から御答弁申し上げましたように、法務省がこの実情を正確に把握するということは大変困難なのが実情であります。

国民の皆様に、御自身が重国籍者であることに気付き、また、国籍選択義務を負っているということを認識していただくということが重要だというふうに思っておりまして、この点、法務省としましても、この重国籍となるケース、あるいは国籍選択義務のあるということを周知を図ってきたところでございますけれども、今後も引き続き広報に努めていきたいというふうに思っております。

<小野田紀美 参議院議員>

法務省で把握することは困難だから自分で是非というふうに言われたんですけど、実際問題、私が二重国籍問題で大変皆様に、本当に国民に御不安と御迷惑をお掛けしたのを申し訳なく思っているんですが、自分自身で把握することが難しいというのが今の一番の問題なんです。

お手元に資料を配っています。二枚目ですね。これ、私の戸籍謄本をもう配らせていただきました。そこに国籍選択というのがあって、平成二十七年十月一日って、これ私、私は選挙前にちゃんとやっていたんですけど、この選択日というのを書かれて初めて私は国籍を二重に持っていたんだというのを戸籍謄本に示されたんですよ。これ、選択をするまでは私の戸籍謄本にこんなもの一切書いてなくて、アメリカ国籍を持っていることすら戸籍謄本では分かりませんでした。そもそも、例えば選挙に出るとき戸籍謄本で日本国籍の証明するんですけど、そこにすら二重国籍載っていなかったら、どうやってそれを防ぐんだよというのは本当疑問なんですが、まあそれはおいておいて、おいておいたとしても、自分自身がこの自分の状態を戸籍謄本を見ても把握できないというのは本当に困るんです。例えば、あるハーフの方から相談を受けたんですけど、ハーフだけど二重国籍だと知らなかったと。例えば外務省とか二重国籍では勤務できない場所に就職しようと思っていて、いざ就職しようと思ったら、あなた二重国籍ですよと言われて、えっとなって困ったというようなこともありました。

以前は通知を送っていたはずなんです。私も母から、大きくなったらどっちか選ばなきゃいけないんだよと、ただ、そのときには選びなさいよという紙が来るというふうに役所で言われたから、その紙が来たらちゃんと選ぶんだよというふうに言われてきて、二十になって届かない、二十二になって届かない。届かなかったんです、結局。で、どうしていいか分からなくてそのままになってしまって、結果、違法状態になってしまったということがありました。これ、過去送っていたはずなんですけど、何でやめちゃったんですか。

<金子修 法務省民事局長>

確かに、委員御指摘のとおり、法務省では、昭和六十三年から平成十六年度末まで、国籍選択期限が過ぎた後に国籍選択をしていないと推測される者に対して国籍選択をする必要がある旨の通知を発出していました。

平成十七年度からはこの通知を行っていないのですが、その理由は、昭和五十九年に創設された国籍選択義務について一定程度定着し、理解が進んだと考えられたこと、当時、通知を発出していない者からの届出も含めて、通知数を上回る国籍選択に関する届出数があったことがその一つの徴憑と考えられました。

また、事務の負担も大きいということを踏まえまして、個別の通知をやめ、ホームページを充実するなどの方法により周知するという方法を選択したものということになります。

<小野田紀美 参議院議員>

ホームページ充実されても、自分が二重国籍だと思っていなかったらそんな手続しようと思わないし、そのホームページ見ようとも思わないんです。これ、私みたいに顔でおやっと分かる人はいいんですけど、分からない人に、親に何も聞いていない人は、本当に自分、何にも分からないうちに違法状態になっているという悲劇を招いてしまうんですよ。

で、私たちの二重国籍問題がすごい大きく取り上げられた翌年、国籍選択者すごい増えたんです、やった人が。つまり、みんな何をしていいのかも分からない、自分がどういう状態なのかも分からないという不安を抱えて、あっ、私、違法状態だったんじゃんというので慌てて手続をしたという人がいるのはやっぱりその数字を見ても事実なので、これは、周知もうできていると思いましたというのはちょっとどうかなと思いますし、過去にそうやって事務手続が煩雑というのはあったかもしれないけど、把握して送っていたという実態があるということは、やっぱりできていたわけですよ、昔は。

なので、このグローバル化社会の中でこれ非常に重要なことで、国籍というとすぐ何か差別だ、差別だとかと言う人もいるんですけど、人種差別撤廃条約にも、締約国が行う国籍の有無という法的地位に基づく異なる扱いは条約の対象にはならないと。つまり、国籍と差別は違うと。国籍はあくまで制度の話であって、法に定められている以上、それが機能するようにやるというのを国がすることは当然のことなんです。日本人ってどうも、国籍をそんなに選んだりするというのがないから国籍ちょっと軽く考えているんじゃないかと思うんですけど、国籍って本当に重いんです、実際自分がそうなって思うんですけど。国籍というのは、ルーツがどこにあるかとかじゃなくて、その人の命の責任を最終的にどこが持つかというのが国籍だと私は思っています。だから、グローバル化が進もうが、誰がその命の責任を最後に取るのかというのはやはり国籍なので、日本がこういう法律を定めた以上、守れるような仕組み、本人がせめて分かれる仕組みというのを早急にやっぱり復活させるなり、何か新しい海外との連携も含み模索するなりしていただきたいと思います。

総理、そう法律に決められているけど全然守れないと、知らずに本人が違法行為になってしまうこの状態、是正したいんです。何かお考えありませんか。

<岸田文雄 内閣総理大臣>

今のやり取り聞いておりまして、要は、国としても国民の皆さんの国籍について十分把握できていない、そして国民の皆さん方もその国籍ということについて十分把握するその手段がない、双方向でこの国籍ということについて確認ができない状況になっている、こういった事態について、やり取りを聞いておりまして、現実はそうなんだということを理解いたしました。

その中で、実務としてどうすることができるのか、ちょっと今、これは是非、法務省始め関係者との中でいま一度検討してもらいたいと思います。具体的にどうするかはそうした議論を踏まえて考えていきたいと存じます。

引用:国会会議録検索システム「第207回国会 参議院 予算委員会 第2号 令和3年12月17日

法務省が1988年(昭和63年)~2004年(平成16年)に、国籍選択期限が過ぎた後に国籍選択をしていないと推測される者に対して送っていた、国籍選択をする必要がある旨の通知ですが、この通知のことを「催告」だと思っておられた方が時々いらっしゃいますが、この通知は「催告」ではありません。

小野田議員の質問にあるように、戸籍には国籍の記載がありません。本人でさえ、自分が本当に重国籍なのか、父親の国籍を持っているのか、母親の国籍を持っているのか、把握していないケースも少なくありません。

実際、私の知人・友人の中にも国籍を持っているかどうかわからないという人がいます。例えば、カナダでは、日本人母からカナダで生まれたので日本とカナダの国籍があるのはわかるけれど(注:日本は父母両系血統主義、カナダは生地主義)、3つ目の国籍(外国人父の国籍)を持っているかどうかわからない(外国人父の国には届けていないから父の国籍は持っていないはず?外国人父の国は制限付きの血統主義を採用しているから父の国籍はもらえないはず?いずれにせよ、今は必要ないから調べていない)という人が何人かいました。

戸籍には、父母の国籍(ただし、記載されるのは婚姻の届出時に、自己申告により国籍証明書類とともに届けられた国籍のみ)と出生地は記載されているので、ある程度国籍に関する知識があれば出生時点での国籍を推測することはできます。ですが、出生の届出後に、国籍の変更・追加にかかわる届出が適切に行われていない可能性もあります。

国際結婚により相手国の国籍を自動付与する国もありますが、実際婚姻により相手国の国籍を付与されているかどうかわからないという人に会ったこともあります。

いずれにせよ、国籍を正しく把握するには、自ら該当国の国籍法を調べたり、政府機関に問い合わせたりする努力が必要になる場合があります。

まとめ

法務大臣による国籍選択の催告は過去に一度も行われたことがないということがはっきりと確認できました。

そして、悪質な犯罪を犯し日本の国益を著しく侵すことでもしない限り、今後も国籍選択の催告は行われないであろうことも分かりました。

安倍元総理の答弁(2016年10月)や法務省民事局長の答弁(2021年12月)にもあるように、今のところ(おそらく今後も)日本政府が重国籍者数を把握するのは困難なわけですから、催告対象者全員に公平に催告を行うのは不可能です。

国籍選択、催告についての法務省のスタンスをまとめると次のようになります。

  • 国籍選択の催告は、重国籍者本人のみならず、その親族等関係者の生活その他全般にわたって極めて重大な影響を及ぼすものである。慎重に対処する必要があり、それゆえ催告は一度も行ったことがない。
  • 国籍選択義務の履行は、重国籍者の自発的な意思に基づいてされるのが望ましい。
  • 法務省としては、催告をするまでもなく重国籍が解消されるよう、今後も引き続き、重国籍となるケース及び国籍選択制度の周知に努める(ホームページなど)。※1988年~2004年に国籍選択期限超過者に対して送付していた、国籍選択をする必要がある旨の通知(=催告ではない)は、2005年以降は送付していない。

日本における国籍の議論が今後どう進んでいくのか、重国籍の子供を持つ親として、見守り、考えていきたいと思います。


 

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