二重国籍でパスポートが2つ! 出入国時の使い分けを徹底解説

重国籍でパスポートが2つ以上ある場合の出入国時の使い分け
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こんにちは!フランス在住のKokoです。

海外から日本へ里帰りする際など、お子さんが重国籍でパスポートを2つ以上持っている場合に「それぞれの国の出入国時にどのパスポートを提示すればいいんだろう?」と悩まれたことはありませんか?

カナダに住んでいた時、まわりには二重国籍、三重国籍のお子さんがたくさんいました。

例えば、カナダ国籍以外をもつ父と日本人の母をもち、カナダで生まれた場合、カナダは生地主義を採っているので、お子さんは少なくとも2つ、場合によっては3つの国籍を持つことになります(「カナダ国籍以外をもつ父」の国が重国籍を認めているかどうかにもよりますが、日本は、出生による重国籍を認めています)。父がフランス人、母が日本人で、お子さんがカナダ生まれの場合、生まれながらにして、フランス・日本・カナダの三重国籍となります。

このように、重国籍でパスポートを2つ、3つ持っている場合、各国の出入国時にどのように使い分ければいいのでしょうか?

結論から言うと、出入国時のパスポートの使い分けは次のようになります。

  • ひとつの国の入国時と出国時で同じパスポートを使うことが大原則
  • 原則として、国籍を持っている国の出入国時には、その国のパスポートを使う(例:日本の出入国時には日本のパスポートを使う、フランスの出入国時にはフランスのパスポートを使う)
  • アメリカ、カナダ、オーストラリア、ドイツ、韓国については、国籍を持っている場合、必ず自国のパスポートで出入国しないといけない(他国のパスポートで出入国すると、罰金を科されたり、トラブルになる可能性がある)
  • 第三国の出入国時には、在住国のパスポートを使う。もしくは、ビザの取得が必要ない(あるいは、ビザの取得が簡単な)国のパスポートを使う

すると、

出入国の時に提示するパスポートの使い分けはわかったけど、じゃあ、空港でのチェックインの時はどのパスポートを出せばいいの?

という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、空港でのチェックイン時は、航空券予約氏名と氏名表記が一致する、航空券予約時に使用したパスポートを提示します。

二重国籍で2つのパスポートの名前が異なる場合どちらのパスポートの氏名表記に合わせて航空券を予約したらよいのか、日本のパスポートの括弧書きの名前は予約名に含めるべきかどうか、については別記事にまとめています。

また、本記事では、重国籍者のパスポート使い分けルールに影響してくる、2022年に電子渡航認証システムが導入された韓国来年2024年から電子渡航認証システムの導入が予定されているヨーロッパ(30ヶ国)の最新情報についてもご紹介します。

  • 韓国K-ETA・・・2021年9月1日から運用開始。2022年11月1日以降、ビザなしで韓国に入国する日本人も対象になっていたが、2023年4月1日~2024年12月31日は日本人については一時的に免除中。
  • ヨーロッパ(30ヶ国)ETIAS・・・2024年から運用開始予定(日本人も対象)

本記事では、私自身が調べたり、重国籍の(お子さんを持つ)人たちに聞いたりしたことをまとめています。ですが、渡航関連の問題は、人それぞれによって条件が違うので注意が必要です。

あるパスポートで出入国できるかどうかは、そのパスポートがどこの国のものであるかももちろん重要ですが、

  • パスポートと航空券の氏名表記が合っているかどうか
  • パスポートの有効期間がどれぐらい残っているか
  • 入国する国にどれぐらい滞在する予定か
  • 往復航空券または第三国への航空券を持っているか
  • パスポートは機械読取式かIC旅券か

などといった条件も関係してきますので、必ずご自身で各国の大使館や入国管理局にご確認ください。

さて、それでは、各国の出入国ルールなど詳しくみていきましょう。

クリックできる目次

【大原則】ひとつの国の入国時と出国時には同じパスポートを使う

まず、重国籍者が複数のパスポートを持っている場合、在住国であれ、日本であれ、それ以外の第三国であれ、あるひとつの国の入国時と出国時には、必ず同じパスポートを使う、というのが大原則です。

入国時に使ったパスポートと出国時に使ったパスポートが違う場合、入国者はずっとその国に滞在し続けている、つまり自国でない場合は不法滞在していることになり、その後の入国時に大きなトラブルになる場合があります。

【原則】国籍保有国の出入国時にはその国のパスポートを使う

また、原則として、重国籍者が自国(国籍保有国)に出入国する際には、自国のパスポートを使います。

自国民が入国(帰国)することは自国民にとって当然の権利なので、どんな状況であっても、入国できないということはありません。

ただ、各国の出入国ルールを調べた結果、自国へ出入国する際に使用するパスポートのルールについては、次の3つのパターンに分けることができるように思います。

  1. 自国のパスポートで出入国しなければならないと法律で定められているが、実際、短期滞在であれば他国のパスポート(ノービザで入国できる国のパスポート)で出入国してもトラブルになっていない国
    (例)日本
  2. 自国のパスポートで出入国しなければならないと法律で定められ、また、それが幅広くアナウンスされており、実際、短期滞在であっても他国のパスポートでは出入国できない(または、罰金が科されたり、トラブルになる可能性がある)国
    (例)アメリカ、カナダ、オーストラリア、ドイツ、韓国
  3. 自国のパスポートで出入国すべきだと明文化されていない国(そのような法律が見つからない国)
    (例)フランス

それでは、次章以降、日本、アメリカ・カナダ・オーストラリア・ドイツ・韓国、フランスの出入国ルールについてご紹介します。

日本人 (重国籍者を含む) の日本出入国時のルール

日本人及び日本国籍を持つ重国籍者の日本出入国時のルール

日本人の日本出入国に関する法律

国際法の考えとして、日本国籍を持っている重国籍者は、日本政府から日本人として扱われます。

まず、日本人の出入国に関する法律を見てみましょう。

第七章 日本人の出国及び帰国

(日本人の出国)

第六十条 本邦外の地域に赴く意図をもつて出国する日本人(乗員を除く。)は、有効な旅券を所持し、その者が出国する出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官から出国の確認を受けなければならない。

 前項の日本人は、出国の確認を受けなければ出国してはならない。

(日本人の帰国)

第六十一条 本邦外の地域から本邦に帰国する日本人(乗員を除く。)は、有効な旅券(有効な旅券を所持することができないときは、日本の国籍を有することを証する文書)を所持し、その者が上陸する出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官から帰国の確認を受けなければならない。

引用:e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」

法律では「日本人は、日本への出入国時、原則として日本のパスポートを提示しなければならない。もし日本のパスポートを提示できない時は、日本国籍を有することを証する文書を提示しなければならない。」とされています。

つまり、日本国籍を持っている重国籍者が外国のパスポートで日本に入国することは法律違反なのです。

ちなみに、ここで言われている、パスポート以外の「日本国籍を有することを証する文書」には次のものがあります。

  • 帰国のための渡航書(海外でパスポートを紛失した場合や新生児の日本帰国を急ぐ場合などに、海外にある日本の大使館・総領事館で発行。1回限り有効)
  • 戸籍謄本(後述)

【補足①】重国籍者は日本パスポートがなくても戸籍謄本で日本人として入国 (帰国) できる

あまり知られていませんが、日本のパスポートの作成が間に合わない場合などやむをえない事情がある場合は、日本のパスポートを所持していなくても外国のパスポート6ヶ月以内に発行された戸籍謄本原本を提示して日本に日本人として入国(帰国)するという方法もあります。

戸籍謄本は日本の本籍地役場でしか入手できません(2024年には海外在住者も海外でマイナンバーを取得・利用できるようになる予定なので、将来的には海外で戸籍謄本を取得できるようになると思いますが、現時点では戸籍謄本は海外の大使館・総領事館では入手できません)。

戸籍謄本を提示して入国する方法の詳細や注意事項についてはこちらの記事を参考にしてください。

【補足②】外国人として入国した重国籍者は「在留資格抹消手続き」により外国人→日本人に変更できる

重国籍者が、日本入国時に日本国籍証明書類(日本のパスポート、帰国のための渡航書、戸籍謄本)を提示せずに、例えばアメリカやカナダのパスポートで日本に入国した場合は、アメリカ人やカナダ人として扱われることになるので、90日を超えて日本に滞在することはできません。

ですが、外国人として日本に入国した後であっても、重国籍者は実際には日本国籍を持っているわけですから、日本滞在中に最寄りの出入国在留管理局・支局・出張所に出向き、戸籍謄本などの必要書類(後述)を提出すれば、外国人としての在留資格は抹消され、日本人としての日本滞在が可能になります。(外国人としての在留資格を抹消した場合は、日本滞在中に日本のパスポートを作り、出国時には日本のパスポートを提示して日本人として出国します。)

在留資格抹消の手続きに必要な書類は次の3つ。

  • 上陸許可証印のある外国パスポート
  • 在留資格抹消願出書(窓口で入手)
  • 戸籍謄本(原本)

この情報は、2021年4月に「出入国在留管理庁外国人在留総合インフォメーションセンター(メール:info-tokyo@i.moj.go.jp)」に確認しておりますが、詳細はご自身でお近くの出入国在留管理局・出張所・支所にご確認ください。(在留資格抹消手続きに関する詳細が掲載されているHPはないそうです。)

【まとめ】重国籍者が日本人として日本に入国・滞在する方法

以上をまとめますと、重国籍者が日本人として日本に滞在するには次の4つの方法があります。

  1. 日本のパスポートを提示し日本人として入国(帰国)・滞在
  2. 帰国のための渡航書を提示し日本人として入国(帰国)・滞在
  3. 外国のパスポート+6ヶ月以内に発行された戸籍謄本原本を提示して日本人として入国(帰国)・滞在
  4. いったん外国人として入国した後に最寄りの出入国在留管理局・支局・出張所に出向き、外国人としての在留資格を抹消し日本人として日本に滞在

上のの場合、日本滞在中に日本のパスポートを作成し日本のパスポートで日本から出国します。(日本では、住民票を入れなくても、海外からの「一時帰国者」として実家やホテルの住所を「居所(きょしょ)」として、居所のある都道府県の申請窓口でパスポートの申請(居所申請)ができます。)

Koko

日本人として入国したのに、日本から外国のパスポートで出国しようとして出国審査官に厳しく注意されたという人の話を聞いたことがありますので気を付けてくださいね。

実際のところ、短期滞在なら他国のパスポートで入国しても問題にはなっていない

上で見た通り、日本国籍を持っている重国籍者が外国のパスポートで日本に入国することは法律違反です。

ですが、実際問題として、コロナによる渡航制限措置が始まる前は、重国籍者が日本にビザなしで入国できる国のパスポートで入国した場合、日本滞在が短期であればトラブルになることはありませんでした。在ニュージーランド日本国大使館のHPにも「コロナ前は、NZ旅券があればビザなしで日本に短期入国できました」と書いてありました。

お子様がNZと日本の二重国籍の場合、お子様の日本旅券(パスポート)を取得していない方もいらっしゃいます。コロナ前は、NZ旅券があればビザなしで日本に短期入国できましたが、現在は必ずビザが必要となり、日本国籍所持者には日本のビザは発給しておりません。

引用:在ニュージーランド日本国大使館「日本への帰国(入国に必要な検疫書類、自宅等待機など)」※現在は削除されている
Koko

この(↑)「現在は」というのは「コロナによる渡航制限下では」という意味です。
コロナで2年半以上一時停止されていたビザ免除措置は、2022年10月11日以降再開されています。

重国籍をもつお子さんが「海外在住日本人としてのJRパス利用資格」を満たさない場合、日本パスポートで入国した場合には日本でJRパスが利用できません。なので、コロナ前は(日本パスポートを所有しているにもかかわらず)あえて外国パスポートで日本に入国し日本でJRパスを利用していた、というケースも結構多かったのではないかと思います。(実際、重国籍者がJRパスを利用する際に「日本へは外国のパスポートで入国してください」とHPで案内している海外の日系旅行代理店を多く見かけますので、そうするのが当たり前だと思っておられる方も多いと思います。)

ちなみに、日本での入国審査の際、日本人の親が日本のパスポートを持っていてもお子さんが外国のパスポートしか持っていない場合は外国人の入国審査の列に並ぶことになっています。

重国籍者が必ず自国のパスポートで出入国しなければいけない国 (アメリカ、カナダ、オーストラリア、ドイツ、韓国)

重国籍者が必ず自国のパスポートで出入国しなければいけない国(アメリカ、カナダ、オーストラリア、ドイツ)

在留邦人数が多い国について各国の出入国ルールを調べてみたところ、次の5か国については必ず自国のパスポートで出入国しなければならないというルールがあることがわかりました。

  • アメリカ
  • カナダ
  • オーストラリア
  • ドイツ
  • 韓国

これらの国籍を持っている人は、自国以外のパスポートを使って出入国することはできません。

アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国は、永住権や就労・学生ビザなどを持たない場合、電子渡航認証システム(米国ESTA、カナダeTA、オーストラリアETAS/ETA、韓国K-ETA)の事前取得が必要ですが、国籍保有者はそういった電子渡航認証システムは取得できない(取得不要な)ルールになっています。※韓国は、2023年4月1日~2024年12月31日、日本人についてK-ETAの適用を一時的に免除中。

アメリカ合衆国

Q. 子供が二重国籍なので、日本のパスポートを使ってアメリカに旅行してもいいですか?日本とアメリカの出入国では、どちらの国のパスポートを使えばいいのでしょうか?

A. アメリカの法律で、アメリカ国民(二重国籍の有無に関わらず)はアメリカのパスポートでアメリカに出入国することが定められています。

あなたの二重国籍のお子様はESTA申請する必要はありませんので、申請しないでください。

アメリカ-日本間を旅行される二重国籍の方は、日米両方の有効なパスポートが必要です。

日本の出入国は日本のパスポートで、アメリカの出入国はアメリカのパスポートを使用してください。

両国のパスポートを同時に提出する場面は、日本の航空カウンターのみです。

Q. 私はアメリカ生まれの二重国籍(日本と米国)です。私の持っている米国のパスポートは、ずいぶん昔に有効期限が切れています。ESTAの申請をして、日本のパスポートでアメリカに旅行してもいいでしょうか?日本のパスポートだけを使ってアメリカに渡るのは、なにかリスク(不利益なこと)があるのでしょうか?

A. アメリカの法律で、アメリカ国民(二重国籍の有無に関わらず)はアメリカのパスポートでアメリカに出入国することが定められています。

アメリカ-日本間を旅行される二重国籍の方は、日米両方の有効なパスポートが必要です。

日本の出入国は日本のパスポートで、アメリカの出入国はアメリカのパスポートを使用してください。

二重国籍の方はESTA申請する必要はありませんので、申請しないでください。

更にご質問がある場合は、航空会社へ直接お問合せください。

引用:在日米国大使館と領事館「よくある質問

カナダ

カナダ国籍保持者のカナダ旅券取得義務化について(注意喚起)

カナダ国籍を保持している在留邦人の皆様へ

カナダでは、カナダ国籍とその他の国籍を併せ持つ重国籍者が空路でカナダに入国する場合、当該航空機に搭乗する際に有効なカナダ旅券の携帯が必要です。

カナダ移民局は、外国への出入国のためにカナダ旅券以外の旅券を携帯することが必要な重国籍者に対して、その旅券とカナダ旅券の両方を携帯するよう同局ホームページで案内しています。

カナダ生まれでカナダ国籍を併せ持つ未成年の方にも適用されますので、ご注意ください。(中略)

本件に関する詳細は、カナダ移民局のホームページをご参照ください。(英語) / (仏語)

(ご参考)日本においても同様に、外国籍を保持する日本人は、日本国旅券と外国旅券の2冊を携行して、日本人として日本に出入国することになっています。

引用:在モントリオール日本国総領事館「カナダ国籍保持者のカナダ旅券取得義務化について(注意喚起)」(2017年6月)

オーストラリア

Australian citizens entering and leaving Australia

Australian citizens should use their Australian passport to enter and leave Australia.

The Australian Border Force has more information on crossing the border.

If you have a passport from another country, you can use that after you leave Australia.

A passport is the best way to show that you are an Australian citizen. You might still be able to enter Australia if you are an Australian citizen without an Australian passport, but it will be more difficult. The airline might also stop you from boarding a plane to Australia.

Smart Traveller has more information about travelling as a dual citizen.

引用:Australian Government – Department of Home Affairs「Travelling as a dual citizen

ドイツ

Ich besitze sowohl einen deutschen als auch einen amerikanischen Pass. Mit welchem Dokument soll ich nach Deutschland reisen?

Bei Einreise in die Bundesrepublik Deutschland müssen Sie sich als Deutscher bei der Einreise nach Deutschland mit Ihrem deutschen Reisepass ausweisen, ansonsten begehen Sie eine Ordnungswidrigkeit, die mit einer Geldstrafe geahndet werden kann. Für die Ausreise aus den USA und die dortige Wiedereinreise sollten Sie Ihren amerikanischen Pass verwenden.

引用:Deutsche Vertretungen in den USA 「Allgemeines

Wichtiger Hinweis für Doppelstaater

Bei Doppelstaatern (Erwachsene und Kinder) ist zu beachten, dass nach internationaler Übung

・die Einreise nach und die Ausreise aus Deutschland nur mit deutschem Reisepass oder Passersatz, z.B. Personalausweis

・die Einreise in und die Ausreise aus dem anderen Staat (dessen Staatsangehörigkeit die Betreffenden ebenfalls besitzen) nur mit den nationalen Dokumenten des anderen Staates

erfolgen sollte.

引用:Auswärtiges Amt「Reisepässe und Personalausweise」

韓国

Q40. [Application Qualification] I am a dual citizenship holder holding both Korean passport and alternate country’s passport. Do I need to apply for K-ETA?

A: The dual citizenship holders are required to present their Korean passport for immigration inspection when they enter or exit the Republic of Korea since they are not allowed to exercise the foreign nationality in the Republic of Korea.

Therefore, Korean citizens who have dual nationality are required to present the Korean passport at the immigration control and they do not need to apply for K-ETA.

引用:K-ETA(公式サイト)「FAQ」Q40
Koko

すべての国についてルールを調べたわけではありません。
上記5か国以外でも「必ず自国のパスポートで出入国しなければならない」というルール、法律がある国はあるはずです。

重国籍者が必ずしも自国のパスポートで出入国しなくてもよいと思われる国 (フランス)

シェンゲン協定加盟国の出入国ルール、フランスの出入国ルール

まず、シェンゲン協定加盟国全体としての出入国ルールというものがあるのかどうか調べてみましたが、「シェンゲン協定加盟国の国籍を持つ者は必ずシェンゲン協定加盟国のパスポートで出入国しなければならない」というような法律などは見つかりませんでした。

ただし、シェンゲン協定加盟国の中には、上で述べたドイツのように、自国民に対しては自国のパスポートで出入国しなければならない(さもなければ罰金も科される法律違反になる)と定めている国はあります。

シェンゲン協定加盟国とは?

シェンゲン協定は、シェンゲン協定加盟国に入国した市民、居住者、旅行者が、国境での出入国管理なく加盟国間を移動できる仕組みです。シェンゲン協定加盟国はヨーロッパの27か国。

シェンゲン協定加盟国>※2023年10月現在(クロアチアが2023年1月に加盟して27ヶ国に)

アイスランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、クロアチア、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク

※イギリス、アイルランド、ブルガリア、ルーマニアの4ヶ国は加盟していませんが、現在、イギリスを除く3ヶ国についてはシェンゲン協定加盟に向けた手続きを行っています。

日本人としてシェンゲン協定加盟国に入国する場合、最初の国で入国審査を受けた後は、加盟国間を移動する際の出入国審査はなく、シェンゲン協定加盟国全体で最大90日間の滞在が可能です(ただし、過去180日以内のシェンゲン協定加盟国滞在日数通算が90日を超えてはいけない)。

フランスについては、「重国籍者は必ず自国のパスポートでフランスに出入国しなければいけない」という、ドイツが定めているようなルール、法律は見つかりませんでした。

今のところは、日本在住でお子さんがフランスと日本の二重国籍を持っているという場合、フランスを含むシェンゲン協定加盟国全体での滞在日数が90日以内なら日本のパスポートでフランス出入国ということも可能なようです。(もちろん、シェンゲン協定加盟国のパスポートがあるなら、シェンゲン協定加盟国のパスポートで出入国した方が出入国できることが確実でスムーズであるのは言うまでもありません。)

「今のところは」と書いたのは、ヨーロッパ(30ヶ国)でも2024年から電子渡航認証システムETIASが導入される予定で、ETIAS導入後はヨーロッパ(30ヶ国)の国籍保有者はそれらの国のパスポートで出入国することが求められるようになるからです。

Koko

次に、昨年11月に日本パスポート保持者を対象に電子渡航認証システムの運用が始まった韓国、そして、2024年から電子渡航認証システムの導入が予定されているヨーロッパの最新情報を紹介します!

重国籍者の出入国に影響を及ぼす電子渡航認証システム (2023年10月現在)

韓国のK-ETA: 日本人も2022年11月から対象になっていたが、現在2024年末まで一時的に免除中

韓国では、すでに2021年9月1日より電子旅行許可制(K-ETA)の本格運用が始まっています。

2022年11月1日以降、日本人に対するビザ免除措置が全面的に再開されましたが、ビザなしで入国する場合は事前にK-ETAへの登録申請を行い、許可を得ることが必要になりました。2023年4月1日~2024年12月31日は日本人については一時的にK-ETAの適用が免除されています。

(参考)「電子旅行許可制(K-ETA)の一時免除(2023年4月1日~2024年12月31日)」(在大韓民国日本国大使館)

2025年以降、日本人に対するK-ETAの適用がどうなるかわかりませんが、いずれにせよ、韓国と日本の二重国籍者については、上述した通り、韓国には韓国パスポートで入国(帰国)しなければならないとされています。

K-ETAに関する最新情報は、K-ETAの公式サイトで確認できます。

ヨーロッパ30ヶ国のETIAS: 2024年から導入予定

ヨーロッパでも2024年(予定)から電子渡航認証システムETIASの導入が予定されています。

Koko

現時点では「2024年から」と書かれているだけで、具体的に2024年のいつから始まるのかは書かれていません。
これまで、導入予定が2022年、2023年、...と公式サイトを見る度に先送りされてきたのですが、やっと詳細が公式サイトに上がってきたので、2024年中に導入される可能性は大きいと思います!

ETIAS導入後は、これまで下のヨーロッパ30ヶ国にノービザ(無査証)で入国できていた世界60ヶ国のパスポート保持者(日本含む)は、ETIASを取得しなければならなくなります。

2024年(予定)から、次のヨーロッパ30ヶ国に入国する場合にETIASが必要になります。

  • シェンゲン協定加盟国(27ヶ国)
    アイスランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、クロアチア、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク
  • シェンゲン協定未加盟のEU加盟国(3ヶ国)
    キプロス、ブルガリア、ルーマニア

これら30ヶ国のいずれかの国籍をもつ重国籍者については、ETIAS公式サイトのQ&Aに次のようにあります。

I have multiple nationalities and one of them is a European country requiring ETIAS – do I need to apply for an ETIAS travel authorisation?

No, if you have a travel document issued by any of the European countries requiring ETIAS or Ireland, you do not need a travel authorisation to enter the territory of any of them. Make sure that you use that travel document during your trip.

引用:European Union – New requirements to travel to Europe – Frequently asked questions about ETIAS

つまり、これら30ヶ国のいずれかの国籍(またはアイルランド国籍)をもつ重国籍者についてはこれら30ヶ国のどの国に入国する場合もETIASの取得は不要であるが、これら30ヶ国のいずれかの国籍を証明するトラベルドキュメント(パスポートなど)を持って出入国するように、ということですね。

例えば、日仏二重国籍の場合、90日以内の滞在であればこれまでは日本パスポートでフランスなどのヨーロッパの国々に入国できていたのが、ETIAS導入後はフランスパスポートでフランス(及びその他のETIAS取得が必要な国)に入国することが求められるようになります。

「ETIAS」と検索するとたくさんのサイト(取得代行業者のサイトと思われる)が出てきますが、次のサイト以外は公式サイトではないのでご注意ください。

運用開始時期や対象国などの詳細(最新情報)はこちらのページで確認できます。

New requirements to travel to Europe – ETIAS(ETIAS公式サイト。英語)

重国籍者が第三国に出入国する際のパスポート使い分け

一般的に、国籍を持たない第三国の出入国については、住んでいる国のパスポート、または、入国にビザが必要ない国(もしビザ取得が必要な国であれば、ビザの取得費用が安かったりビザ取得がしやすかったりする国)のパスポートを使います。

ICチップや出入国スタンプは、複数のパスポート使い分けで問題にならない?

ICチップや出入国スタンプは、複数のパスポートを使い分けることで問題にならない?

国によって複数のパスポートを使い分ける際に皆さんが心配されることとして、次のようなことがあります。

複数のパスポートのICチップに出入国記録や海外渡航歴が記録されて、整合性が取れなくなるんじゃないの?

いくつかのパスポートに出入国スタンプが別々に押されて、問題にならないの?

ICチップに出入国記録や渡航歴は記録される?

ICチップには、出入国記録や海外渡航歴は記録されません。

日本の外務省のHPにも次のようにあります。

Q41 ICチップに出入国記録や海外渡航歴は記録されますか?

A 出入国記録や海外渡航歴は記録されません。

ICチップには、パスポート所持人の国籍、氏名、生年月日などの身分事項と顔写真の情報は入っていますが、日本の出入国記録や海外渡航歴などの情報は記録されません。

引用:外務省「パスポート(旅券)- こんな時,パスポートQ&A

日本の出入国記録だけではなく、どこの国の出入国記録も記録されません。

ですので、「カナダのパスポートでカナダを出国して、日本のパスポートで日本に入国し、またカナダにカナダのパスポートで入国したら、ICチップに記録された渡航歴の整合性が取れないんじゃないの?」という心配は不要です。

出入国スタンプのつじつまが合わなくなる?

次に、パスポートの査証欄に押される出入国スタンプですが、入国する国の滞在期間などの証明のためにスタンプを押してもらう必要がある場合がありますが、それはあくまでひとつの国の中(シェンゲン協定加盟国であれば、シェンゲン協定加盟国の中)で整合性が取れていればいいわけで、他国の出入国スタンプとの整合性を気にする必要はありません。

実際、私のまわりで、重国籍で複数のパスポートを使い分け、複数のパスポートに出入国スタンプが押されているからといって、スタンプの整合性が取れずに問題になったという話は聞いたことはありません。

そもそも、自国民には出入国スタンプを押さなかったり(例:シェンゲン協定加盟国)、カナダのように入国審査が機械化されたりして観光客にさえ出入国スタンプを押さない国が増えてきましたよね。

日本も顔認証ゲートが導入されて、うっかり顔認証ゲートを通ってしまうとスタンプが押されなくなりましたし...

Koko

ちょっと話はずれますが、日本で顔認証ゲートを通ってしまって出入国スタンプが押してもらえなかった場合は、すぐに顔認証ゲートを出たところにいる係員さんに声をかけて出入国スタンプを押してもらうようにしてください!

Koko

日本の出入国スタンプは、日本での手続き(非居住者の免税、期限切れの運転免許証更新、年金受給(カラ期間証明)、海外からの転入届)や外国のビザ申請など、様々な手続きに必要になりますので。
いざとなれば、出入国在留管理庁に出入国記録を開示請求するという手もあるんですが、時間も手間もお金もかかりますから...

重国籍者が空港でのチェックイン時に提示するパスポートは?

空港でのチェックイン時は、航空券予約氏名と氏名表記が一致する、航空券予約時に使用したパスポートを提示します。

目的地への片道航空券しかない場合などは、目的地への入国・滞在資格があるかどうか確認するために、目的地の国に入国する際に使用するパスポートの提示を求められます。

わからなければ、両方のパスポートを提示すれば、航空会社の職員さんが適宜必要な応じてパスポートを見てくれます。

【まとめ】二重国籍者のパスポート使い分け方法

二重国籍者など、重国籍者がパスポートを2つ以上持っている場合のパスポート使い分け方法をまとめると、以下のようになります。

  • ひとつの国の入国時と出国時で同じパスポートを使うことが大原則
  • 原則として、国籍保有国の出入国時には、その国のパスポートを使う。
  • 日本人は、日本人として(日本国パスポートまたは日本国籍を有することを証する文書を提示して)出入国しなければならないと法律で定められている。しかし、短期滞在の場合、日本に他国のパスポートで出入国してもトラブルになっていないのが現実(法律違反ですが)。
  • アメリカ、カナダ、オーストラリア、ドイツ、韓国の国籍を持っている場合、短期間の滞在であっても、必ず自国のパスポートで出入国する。
  • 第三国の出入国時には、在住国のパスポートを使う。もしくは、ビザ取得が不要、あるいは、ビザ取得しやすい国のパスポートを使う。

(よっぽど何か特別な事情があるというのでなければ、)国際的な慣行に従って、国籍保有国の出入国時にはその国のパスポートを使うのが安全、安心です。

ヨーロッパについては、2024年(予定)から電子渡航認証システムの導入が予定されているので、重国籍者でヨーロッパ渡航予定がある方は今後の動向にご注意くださいね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!お役に立てましたら幸いです。

重国籍をお持ちの場合に参考にしていただける記事を他にも書いています。

(私は、以前、国籍・戸籍にかかわる仕事をしていたことがあります。)

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