隠れて二重国籍 – ばれるのはどんな時? ばれたらどうなる?

自らの意思で外国籍取得。日本国籍を喪失しても日本のパスポートを使い続けていたらどうなる?どんな時にばれる?ばれたらどうなる?
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こんにちは!フランス在住のKokoです。

私は、フランス以外にカナダにも長く住んだことがありますが、これまで、日本人でフランスやカナダの国籍を取得しようかと悩んでいる人たちや、悩みに悩んだ挙句フランスやカナダの国籍を取得して日本国籍を喪失してしまった人を見てきました。

私自身は今のところどうしても外国籍を取得しなければならないという切羽詰まった状況にありませんが、それでも、永住権を保持するために居住条件に気をつけなければならなかったり、EU内の他国で就労許可を得るまで働けなかったり、色々と不都合があり、将来の外国籍取得について考えることがあります。

日本では、自ら希望して(自分の意思で)外国籍を取得した場合の二重国籍は認められておらず、自分の意思で外国籍を取得した時点で日本国籍を失う、と法律で定められています(国籍法第11条第1項)。

ですが、外国籍を取得しても、(私が現時点で確認できている限りでは、日本と「帰化通達協定」を結んでいるドイツを除いては)外国政府は日本政府に「日本人の◯◯さんが我が国の国籍を取得しましたよ」と連絡するわけではないので、外国籍を取得した本人自身が日本側に報告しない限りは、日本側は知ることができません。

というわけで、自分の意思で外国籍を取得しても、日本側に届けずに、日本のパスポートで日本に出入国したり、日本のパスポートを更新(切替)したりしている人もおられるようです(←違法行為です)。

こういった人たちは「偽装日本人」「隠れ(見かけ)重国籍者」などと呼ばれることがありますが、国籍を取得した国の政府が日本側に知らせなくても、ふとしたきっかけで「自分の意思で外国籍を取得したのに国籍喪失届を出さずに隠れて日本人のふりをし続けている」ことがばれてしまうことがあります。

この記事を読むと分かること

  • どんな場合に日本国籍を喪失するのか?
  • 日本国籍喪失後、どんな手続きをする必要があるのか?
  • 日本国籍喪失後、何も手続きをしなかったらどうなるのか?
  • 日本国籍喪失後、日本のパスポートを使い続けたり、新たに日本のパスポートを取得したりしたら、どんな罰則があるのか?
  • 日本国籍喪失後、何も手続きをせず、まだ日本人のふりをしていたら(日本のパスポートを使い続けていたら)、どういった時にそれがばれてしまうのか?ばれたらどうなるのか?

本記事は、次のような人は対象としていません。

  1. 生まれつき重国籍の人
  2. 国際結婚などにより相手国から自動的に国籍を付与され重国籍となった人
  3. またはにより重国籍となったが、国籍選択期限までに国籍を選択していない人

なぜなら、日本は、①②の人については一定期間重国籍であることを認めているからです。

また、③についても、「自らの希望で外国籍を取得した人」とは扱いがまったく違い、国籍選択期限までに国籍の選択を行わないことは法律違反ではあるものの、罰則はなく、自動的に日本国籍を喪失することもないからです。

国籍選択期限までに国籍選択の手続きをしていない人には、次の2つの記事がお役に立てると思います。

クリックできる目次

自らの意思で外国籍を取得した時点で、自動的に日本国籍を失う

日本の国籍法を見てみよう

まず、国籍法を見てみましょう。

日本国籍自動喪失規定が定められている「国籍法第11条第1項 」

(国籍の喪失)

第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。

自分の意思で外国の国籍を取得した(他国に帰化した)日本人は、その時点で自動的に日本国籍を失います。

Koko

この「自分の意思で」というのは、例えば「カナダ人になりたい!」と自ら希望し、カナダ国籍取得のための書類を揃え申請し、カナダ国籍取得の宣誓を行い、カナダ人になることです。
国際結婚や養子縁組などで、自分が相手国の国籍取得を希望しているいないに関わらず自動的に相手国の国籍が付与される場合はその限りではありません。

自らの意思で外国籍を取得した場合、一瞬たりとも、二重国籍の状態にはなりません。

日本側には国籍喪失の届出をしていないから、まだ二重国籍の状態だ!

というのは間違いです。

とりあえず外国籍を取得したけど、最終的に2つの国籍のどっちにするか、ゆっくり考えて決めよう。

ということもできません。

日本国籍自動喪失規定を知らずに外国籍を取得してしまった人も結構いる

現在日本で進行中の「国籍はく奪条項違憲訴訟」の原告のひとりである野川等(のがわ ひとし)さんは2001年に仕事のためにスイス国籍を取得されていますが、国籍法の第11条第1項の日本国籍自動喪失規定はご存知ではありませんでした。

1984年にスイスで貿易関係の会社を設立し、2001年、スイス国籍を取得しました。私の経営する会社がスイスの公共入札をする上で必要だったからです。

当時、私は、国籍法11条1項を知りませんでした。スイス国籍を取得しても自分は日本国民のままだと思っていました。

1980年代までに外国に渡った人は、ほとんど、この条文を知らなかったと思います。知っていれば私も、日本国籍を維持することを選び、入札を諦めていました。

引用:国籍はく奪条項違憲訴訟「野川等(のがわ ひとし)さん意見陳述
Koko

このような話はよく聞きます。

このサイトを運営するようになってから、外国籍を取得したために日本国籍を喪失してしまった読者の方のお話を聞く機会が増えましたが、

外国籍を取得すると自動的に日本国籍を失うという事実を知らなかった。
昔は大使館や領事館も今のように幅広く知らせていなかった。

とおっしゃる方が少なくありません。

ちなみに、在ニューヨーク総領事館のHPに、自分は日本国籍を失っておらず二重国籍だと信じていた人の事例(誤認の事例)が挙げられています。

事例1:

Aさんは日本国籍のみ保有していたが、米国に移住し米国籍取得を取得した。

しかし、国籍喪失の届出をしなかったため戸籍に国籍喪失の事実が反映されず、本籍地役場で戸籍謄本を請求すると問題無く取得できた。

また、その戸籍謄本を添えて日本のパスポートを申請した(申請時に自身に米国籍があることは申告しなかった)ところ取得できたため、自分は日本と米国の二重国籍者であると思っていた。

→ 米国籍を取得した時点で日本国籍を喪失しているため、Aさんには米国籍しか無く二重国籍ではありません。

客観的事実としては、外国人が虚偽申請により日本のパスポートを取得した、ということになります。

不正に旅券を取得することや不正取得した旅券を使用することは法令により処罰の対象となりますので、速やかに旅券を返納するとともに国籍喪失届を提出する必要があります。

引用:在ニューヨーク日本国総領事館「日本国籍をお持ちで米国籍等を取得された方,これから取得される方へ(日本国籍について正しい理解のために)

ちなみに、この在ニューヨーク総領事館の事例は、現在の米国でパスポート申請をする際には起こりえない事例です。

なぜなら、今は米国のどの日本国大使館・総領事館でもパスポート申請時には米国の滞在許可証(グリーンカードなど)の提示を求めているからです。

「滞在許可証が提示できない → 米国籍を取得しましたね?」という話になるため、「申請時に自身に米国籍があることを申告せずに日本パスポートを取得」という状況はあり得ません。(詳しくは後述)

未成年の外国籍取得も、自らの意思による取得とみなされる?

国籍法では「未成年の」国籍取得ということでは特に触れられておらず、また、法務省のHPにも情報がありません。

ですが、世界各国にある日本の大使館・総領事館のHPには、おおむね次のような記載があります。

子が未成年の時に、親など法定代理人が未成年の子に代わって外国籍取得の手続きをとった場合も、自己の志望による外国籍の取得に当たると考えられています。

引用:在カナダ日本国大使館「日本国籍の喪失等に関するご案内

つまり、親権者の意思で未成年の子供に代わって子供の外国籍取得の手続きを行った場合も、未成年の子供は日本国籍を喪失してしまうんです。

Koko

このことを知らずに、「未成年のうちに外国籍を取得しておけば大丈夫!いずれにせよ国籍選択期限までに国籍選択をすればよいのだから」と考え、親が代理で未成年の子の外国籍を取得してしまい、意図せずしてお子さんが日本国籍を失ってしまっていた、というケースが少なくありません。

ただし、例えば、親が外国籍を取得した場合、その親の未成年の子供に、親が取得した外国籍を自動的に付与するという国もあります(例:アメリカ)。この場合、未成年の子供の外国籍取得については「自己の意思での取得」とは見なされず、日本国籍を喪失せず、重国籍であることが認められます。(自動的に外国籍を付与された場合であっても、国籍選択期限までに国籍を選択する義務が発生します。)

未成年のお子さんの外国籍取得(国籍登録)については「この場合は、日本国籍は喪失しないはず。大丈夫。」とご自身で判断されず、外国籍取得申請前に、日本の法務局や管轄の大使館・総領事館に必ずご確認ください。

よく知られている日露カップルの間に日本で生まれたお子さんの日本国籍喪失事案は胸が痛くなる事案です。ロシア人配偶者との間に日本で子供が生まれたので、ロシア側に出生届を出すつもりで書類を記入したら、実はそれが「自己意思による外国籍取得」行為に当たり、お子さんは日本に住んでいるのに日本国籍を失ってしまっていたという事案が多くありました。当時はロシア側も日本側も日本国籍喪失について注意喚起していなかったので、多くの悲劇を生みました。

ロシアに限らず、該当国以外(例えば日本)で生まれた場合、出生時に該当国の国籍が自動的に付与されていない場合があります。

出生登録のつもりで軽い気持ちでやったことが「自己意思での外国籍取得」に当たると解釈されお子さんが自動的に日本国籍を喪失してしまうことのないよう、外国側に出生登録(国籍登録)を行う際には、登録しようとする国の法律がどうなっているのか、出生登録(国籍登録)の行為が国籍法第11条第1項に抵触しないかどうか、注意が必要です。

「国籍喪失届」の提出期限、提出先、必要書類

「国籍喪失届」の提出は、海外では3ヶ月以内、日本国内では1ヶ月以内に

自らの意思で外国籍を取得した場合、海外在住の場合は国籍喪失の事実を知ってから3ヶ月以内(日本在住の場合は1ヶ月以内)に、管轄の大使館・総領事館(日本在住の場合は本籍地役場)に「国籍喪失届」を出すことが義務付けられています(戸籍法第103条)。

第百三条 国籍喪失の届出は、届出事件の本人、配偶者又は四親等内の親族が、国籍喪失の事実を知つた日から一箇月以内(届出をすべき者がその事実を知つた日に国外に在るときは、その日から三箇月以内)に、これをしなければならない。

「国籍喪失届」の必要書類

  1. 国籍喪失届 2通(A4用紙に印刷。アメリカ、カナダのレターサイズ用紙への印刷は不可。管轄の大使館・総領事館に返信用封筒を送れば届出用紙を送ってもらえずはずなので問い合わせてみよう)
  2. 国籍取得年月日が明記された国籍取得証明書(帰化証明書) 原本
  3. ②の和訳文 2通(自分が訳したのでOK。管轄の大使館・総領事館に、和訳見本やテンプレートが用意されている場合があるので問い合わせてみよう)
  4. 日本のパスポート(失効処理され返却してもらえる。元日本人の証明、過去の出入国年月日の証明として使える場合があるので、大切に保管しておこう)

郵送での届出も可能とされていますが、郵送の場合は、国籍取得証明書(帰化証明書)の原本や日本のパスポートは送れませんので、書類によってはコピーして公証してもらう必要が出てきます。詳細は管轄の大使館・総領事館にご確認ください。

「国籍喪失届」を出すと戸籍はどうなる?

「国籍喪失届」を出すと戸籍から抹消、除籍される

管轄の大使館・総領事館宛に出した国籍喪失届は、外務省を経由して本籍地役場に送られます。

そして、本籍地役場で審査後、問題がなければ、

  • 国籍喪失者は戸籍から抹消(除籍)されます。
  • 同じ戸籍に他の家族がいる場合、例えば、日本人同士の夫婦であったのが、夫だけ外国籍を取得して日本国籍を喪失した場合、夫の欄に「除籍」と記載され、妻の欄に、外国人配偶者として夫の氏名が記載されることになります(元日本人であっても、原則として、夫の氏名はカタカナ表記になります)。

その後は、次のどちらかで元日本人としての証明ができます。

  • 国籍喪失者が「除籍」となった旨が記載されている戸籍謄本(上の例では、まだ妻が日本人なので、妻が戸籍に残っている)
  • 除籍謄本(=同一戸籍内の全員が婚姻や死亡、国籍喪失などで除籍となり、誰もいなくなった戸籍)

こういった元日本人の証明は、日本の年金請求や、日本での遺産相続手続きや不動産登記手続きなどの際に必要となります。

「国籍喪失届」を出さないとどうなる? 罰則がある?

「国籍喪失届」を出さないと、戸籍上では日本人のまま

外国籍を取得しても、(ドイツを除いて)国籍を取得した国は、日本政府に「日本人の誰々さんが我が国の国籍を取得しましたよ」という連絡はしません。ですので、ほとんどの場合、日本政府は誰が自らの意思で外国籍を取得したのか知り得ません。

外国籍を取得した本人が国籍喪失届を出さず、日本側に報告しなければ、その人は戸籍上ではずっと日本国籍を持っているかのように見えます。本当はもう日本人ではないのに、日本人だった時と同じように、戸籍謄本を取得できますし、場合によっては日本のパスポートが誤って交付されたりすることもあり得ます。日本国籍は喪失しているのに、一見すると日本国籍と外国籍の両方を持っているかのように見えます。

ですが、戸籍は、日本国籍者のみに作られるものです。

出生、婚姻、離婚などの身分事項、国籍選択・喪失などの国籍にかかわる事項など、戸籍に記載されていることはすべて各人によって届けられた事実のみです。届け出られていない事実については記載されないのです。

ですので、戸籍謄本を取得できるということ、戸籍謄本の提示によって日本国パスポートが交付されるということは、必ずしも日本国籍を持っていることの証明にならない場合があるということなのです。

「国籍喪失届」を出さない場合の罰則は?

国籍喪失届を出さないことは戸籍法違反(上で引用した、戸籍法第103条違反)です。

戸籍法には罰則規定があります。

第百三十七条 正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、五万円以下の過料に処する。

ただ、日本の弁護士さんによると、戸籍法は日本国外に住む外国人には適用されないそうです。ですので、海外在住の日本国籍喪失者本人には国籍喪失届の届出義務はない(日本国内在住の場合は外国人でも届出義務がある)という解釈になります。

現在日本で進行中の福岡訴訟の日本政府の反論(2022年11月18日)においても、その点については日本政府が認めていました。

国籍法11条1項により日本国籍を喪失し、かつ外国で居住する者に国籍喪失届の届出義務がないことは認める。

引用:近藤ユリ法律相談室 – 国籍法11条1項に関する提訴詳細 – 被告(政府側)提出書類「被告第一準備書面」(P.13)
Koko

実際、コロナによる渡航制限下で外国人としてビザを取得して日本に入国するために国籍喪失届を出した読者数名の方からお話を伺いましたが、5年、10年過ぎて国籍喪失届を出した人でも、「罰則の対象になった」「遅く出したことで注意を受けた」という方は一人もおられませんでした。

Koko

ただ、国籍喪失届の提出を義務付けている戸籍法第103条によると、届出義務は国籍喪失者本人だけでなく「配偶者又は四親等内の親族」にも課されているんですけどね...

「国籍喪失届」は届出期限を過ぎても出せる?

国籍喪失届は届出期限を過ぎても出せます。

実際、日本国籍を喪失してもすぐには国籍喪失届を出さず、日本で年金受給や遺産相続、不動産登記などの手続きなどが必要になった時に出す、つまり必要に迫られて出す人も結構おられるようです。

コロナ禍中は「国籍喪失届」提出ラッシュだったようです。

コロナ禍以前は、例えば米国籍やカナダ国籍を取得し日本国籍を喪失した元日本人は、米国パスポートやカナダパスポートで日本入国、短期滞在(90日以内)が可能でした。

それが、コロナによる渡航制限により、2年半以上もの間、外国籍者(元日本人含む)は海外の日本国大使館・総領事館で発給されたビザ(査証)がないと日本に入国できない状況になりました(この渡航制限措置は2022年10月10日で終了)。

海外にある日本の大使館・総領事館は、戸籍上日本人の人にビザを発給しません。自己意思で外国籍を取得し、日本国籍を喪失していた人たちは、まずは国籍喪失届を出し、戸籍に日本国籍喪失の事実を記載するよう求められました。

日本国籍を喪失してもこれまで国籍喪失届を出していなかった理由や状況は様々だと思いますが...日本のご家族が病気になられたりして、コロナ禍中にどうしても日本に行く必要があり、覚悟を決めて国籍喪失届を出した人が結構おられたようです。

緊急の場合、日本国籍喪失の事実が戸籍に記載されるのを待つことなく、大使館・総領事館に国籍喪失届を出すのと同時にビザの申請を受け付けてもらえた人もいたようですが、国籍喪失届の必要書類の準備に時間がかかり急病の日本の家族にすぐに会いに行けなかった人、親の死に目に会えなかった人もいた、という話を聞きました。(国籍喪失届の提出に必須の帰化証明書を紛失してしまっていて、帰化証明書の再発行手続きから始めなければならなかったというケースもあったようです。)

今後また、今回のように日本国籍喪失を早急に証明しなければならない状況があるかどうかわかりませんが、国籍喪失届を出していなかったことでなんらかの手続きに予想以上の時間がかかってしまう場合があり得ます。提出が必要になった!という時にすぐに国籍喪失届が出せるよう、日頃から書類を準備しておかれるとよいかもしれません(上に書いたように、本当は、海外在住の日本国籍喪失者本人には国籍喪失届の提出義務はないのですが、海外にある日本の大使館・総領事館ではそのようには言われませんので...)。

もし日本のパスポートを使い続けたり、新たに取得したりしたら? どんな罰則がある?

本当はもう日本国籍を喪失しているのに、日本のパスポートを使い続けたり、新たに日本のパスポートを取得したりしたらどうなる?

日本国籍喪失後、国籍喪失時に持っていた日本のパスポートを使い続けたり、新たに日本のパスポートを取得したりして、それが判明してしまったらどうなるのでしょうか。

日本国籍喪失時点で、日本のパスポートは失効する

パスポートの名義人が日本国籍を喪失した時点で、持っていた日本のパスポートは効力を失います(旅券法第18条)。

(旅券の失効)

第十八条 旅券は、次の各号のいずれかに該当する場合には、その効力を失う。

 旅券の名義人が死亡し、又は日本の国籍を失つたとき。

まだ有効期限が残っていても(見た目では有効でも)、実質そのパスポートは失効しているので使えません。

失効処理(VOID処理)がされていない状態であっても使えません。

日本のパスポートを使い続けたり、新たに取得したりした場合の罰則

日本のパスポートの不正使用、不正取得に関する罰則は、次の通り(旅券法第23条)。

(罰則)

第二十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 この法律に基づく申請又は請求に関する書類に虚偽の記載をすることその他不正の行為によつて当該申請又は請求に係る旅券又は渡航書の交付を受けた者

(中略)

 効力を失つた旅券又は渡航書を行使した者

つまり、日本国籍喪失後、旅券申請書に虚偽の記載をするなどして新たに日本のパスポートを申請・取得したり、(見た目は有効でも実際には)失効している日本のパスポートを使ったりした場合、5年以下の懲役または300万円以下の罰金(または、その両方)に処せられる可能性があります。

「旅券申請に関する書類に虚偽の記載をする」とは?

パスポートの申請書には、下図のように、「外国籍の有無」についての記載欄があります。

自らの意思で外国籍を取得したにもかかわらず、「現在、外国の国籍を有していますか。」との質問に「いいえ」と回答した場合は、虚偽の記載をしたことになります。

「旅券申請に関する書類に虚偽の記載をする」とは?
一般旅券発給申請書(ダウンロード版)

隠れて日本人のふりをしているのがばれてしまうのはどんな時? ばれたらどうなる?

大使館や総領事館で在住国の滞在許可証の提示を求められた時

多くの場合は、パスポートの申請などのために海外にある日本の大使館・総領事館の窓口に行った時にばれます。

上で述べたように、日本のパスポートを持っていることは必ずしも日本人であることの証明にはならないので、大使館・総領事館の窓口では、日本のパスポートだけではなく、その国の滞在許可証の提示も求めることで、日本国籍の有無を確実に確認しようとします。

なぜなら、滞在許可証を持っている=その国の国籍を持っていない、ということだからです。

「滞在許可証」とは?

各国政府が、一定期間(または無期限に)その国に滞在することを許可した外国人居住者に付与する許可証のこと。英語では「residence permit」。

例えば、永住許可証(例:アメリカのグリーンカード、カナダのPRカード)、就労許可証、就学許可証、短期滞在許可証など、国によって様々な種類の許可証がある。カードタイプのもの、用紙タイプのもの、パスポートに貼り付けられているものがある。

もし滞在許可証を提示できなければ、

「なぜ提示できないのですか?」

「ご自身の意思で(在住国の)国籍を取得されたのですか?」

「では、もう日本国籍は喪失なさっていますね。」

「国籍喪失届を出してください。」

という話になり、国籍喪失届を出すこと(と日本のパスポートを返納すること)が求められます。

(手続きが終わったら、日本のパスポートは、穴をあけるVOID処理をした上で返却してもらえます。)

生まれつきの重国籍者は、滞在許可証の代わりに、在住国のパスポートや出生証明書(生地主義の国で生まれた場合)を提示すればOKです。

※国籍選択期限を過ぎている人については、職員さんから「国籍選択期限が過ぎていますので、国籍選択の届出をお願いしますね。」と言われ、国籍選択制度についての説明を受けることがあります(その場で国籍選択の手続きを強制されたり、日本国籍を喪失させられたりすることはありません)。国籍選択について悩んでいる、どうしようか決めかねているということであれば、そのように伝えましょう。

大使館・総領事館でのパスポート申請時

在バンクーバー総領事館のHPでは、パスポート申請時に在住国カナダの滞在資格を確認する理由について次のように説明されています。

Q:旅券の新規・更新申請の際、カナダの滞在資格が確認できる書類(カナダ滞在査証、永住権証(PR Card)等)の提示が必要とありますが、それは、どうしてですか?

A.日本の旅券は日本国籍者のみに発給いたしますので、カナダ滞在資格を提示いただいた上で、日本国籍の有無を確認しております。

日本の国籍法(第11条)では、「自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」と規定されています。

従って、カナダ国籍等を帰化により取得した場合には、カナダ籍取得時点で日本国籍は喪失していることになり、日本の旅券は発給できません。

引用:在バンクーバー日本国総領事館「旅券(パスポート)Q&A

大使館・総領事館によっては、お子さん(18歳未満 = 日本での未成年)のパスポート申請時に日本人父母の在住国滞在許可証の提示を求められる場合があります(アメリカで申請する場合、どこの総領事館でも求められるようです)。

確かに、在米の日本国総領事館のHPを見ると、次のような記載があります。

新生児や未成年者が初めて旅券を申請する際には、日本人法定代理人父もしくは母の米国滞在資格書類(グリーンカード、ビザ及びI-94等)及び旅券、運転免許証等の身分証明書を併せお持ち下さい。

引用:在シアトル日本国総領事館「パスポート – 3. 新規発給

新生児や未成年者が初めて旅券を申請する際には、日本人の法定代理人(父母)の米国滞在資格書類(上記(4)に記載のもの)及び旅券、運転免許証等の身分証明書を併せてご持参下さい。

引用:在ロサンゼルス日本国総領事館「パスポート – 新規発給・期限切れ

申請者が18歳未満の場合は、父母いずれかの法定代理人署名(申請書の裏面)が必要になります。(中略)

また、申請の際には、法定代理人の米国滞在資格も確認させていただきますので、日本のパスポートと米国滞在資格が確認できる書類(詳細はこちら)をお持ち下さい。

引用:在サンフランシスコ日本国総領事館「新規発給(パスポートを初めて申請する方、有効期限切れの方)
Koko

これらを読むと、両親が日本人の場合、日本人父または母どちらか一方の米国滞在資格提示でよいように思えますが、実際には日本人父母両方の滞在資格提示を求められるケースが多いようです(2021年~2022年。読者さん情報)。

皆さん、ご自身のパスポート申請時には滞在許可証の提示が必要だということをご存じなのですが、お子さん(未成年)のパスポート申請時に日本人父母の滞在許可証の提示が求められるということを知らず、いざ求められて(すでに日本国籍を喪失しており、提示できず)困ってしまった、という人も少なくありません。

もし日本人父母が滞在許可証を提示できず、総領事館が「この人は外国籍を取得し日本国籍を喪失しているかも」という疑義を抱いた場合は、総領事館から日本へ連絡がいく可能性があります。

Koko

実際、米国の某総領事館でお子さんのパスポート申請時、ご自身(日本人母)の米国滞在許可証を提示できずお子さんのパスポート申請を取り下げたある読者の方が、日本でご自身のパスポート申請をしようとしたところ、(その人は日本に住民票があるので米国滞在資格の提示は不要なはずなのですが、)申請窓口の職員さんから「外務省がアメリカ在留資格の提示を求めています。」と言われたそうです(2022年の情報)。

実際、パスポート申請時にその国の滞在許可証の提示を求めているのかどうか、世界各国の日本国大使館・総領事館のHPで確認してみたところ、多くの公館で「滞在許可証の提示が必要」であると明記されていました。

滞在許可証の提示を求めることがHPに記載されている国
滞在許可証の提示を求めることがHPに記載されていない国
  • カナダ
  • アメリカ合衆国
  • イギリス
  • フランス
  • ベルギー
  • オランダ
  • スペイン
  • スイス
  • ノルウェー
  • スウェーデン
  • ブラジル
  • ペルー
  • オーストラリア
  • ニュージーランド
  • ロシア(持っている場合)
  • ドイツ(2023年春頃から?)
  • ドイツ
  • イタリア
  • ポルトガル
  • オーストリア
  • ブルガリア
  • キプロス
  • デンマーク
  • フィンランド
  • アルゼンチン
  • 中国
  • 韓国
  • タイ
  • マレーシア

ただ、在住国の滞在許可証がカードタイプだったり別用紙だったりして、パスポートとは別に存在している国もあれば、パスポートの査証ページに貼り付けられている国もありますよね。滞在許可証がパスポートに貼り付けられているタイプの国の場合は、「滞在許可証を持ってきてください」とHPに記載されていないこともあるのではないかと思います。

私は海外に住んで20年以上になりますが、10年以上前のパスポート切替時に滞在許可証の提示を求められた記憶がありません。

カナダに移住し管轄の総領事館へ行った時に、日本のパスポートだけでなくカナダのPRカード(永住者カード)の提示も求められ、

Koko

日本の総領事館で、なぜカナダの滞在許可証の提示が必要なの??

と不思議に思いながらPRカードを提示した記憶があります。

2021年にドイツでパスポートの切替申請をした時には、ドイツの滞在許可証の提示は求められませんでした(【注】その後、2023年春頃から(?)ドイツでもパスポート申請時に滞在許可証の提示が求められるようになりました)。総領事館の職員さんに「なぜドイツでは日本のパスポート申請時に滞在許可証の提示が不要なんですか?」と尋ねたところ、

日独間には帰化通達条約(相互通報協定)があり、ドイツで日本人が自己意思でドイツ国籍を取得した際には、帰化証明書と引き換えに日本のパスポートをドイツの帰化担当役所に提出することが求められる。その後そのパスポートが在ドイツ日本国大使館に送付されてくる仕組みになっているので、誰が日本国籍を喪失したかの把握が可能。よって、滞在許可証提示により日本国籍の確認を行う必要がない。

とのことでした。

Koko

日本人が自分の意思でドイツ国籍を取得した場合、二重国籍者のふりをすることはできないんですね...

※「国際結婚を考える会(JAIF)」のHPに日独間の帰化通達条約についての記事があります。(ただ、ドイツも全面的な重国籍容認に舵を切り、2024年前半の国籍法改正を目指しているそうです。ドイツでの国籍法改正後もこの相互通報協定は継続されるのでしょうか??)

大使館・総領事館で戸籍の届出時

戸籍は日本国籍者にのみ作られます。

ですので、大使館や総領事館の窓口で、婚姻や出生などの届出を行う際にも、日本国籍の有無をチェックされます。

日本国籍を持たないのに、日本人として婚姻届を出したり、日本人としてお子さんの出生届を出しお子さんが日本国籍を持つことになった場合、将来日本国籍喪失が判明した時点で、国籍喪失時点に戻って戸籍を訂正することになり、家族の法的地位などに大きな影響を及ぼすことになります。

在ニューヨーク総領事館のHPに次のような事例が挙げられています。

事例2:

日本人男性Bさんは、米国籍を取得し日本国籍を喪失したが、それを届出ないまましばらく後に米国人女性と結婚し、最寄りの総領事館で婚姻届を出した。

その後、子供C君が生まれたが、Bさんは自分が日本と米国の二重国籍であると思っていたためC君の出生届を日本総領事館に提出し、それが戸籍に反映されC君も二重国籍になったと思っていた。

ところが、その後Bさんの日本国籍喪失事実が判明した。

→ C君が出生に伴い日本国籍を取得する条件として、C君出生時に両親のいずれかが日本国籍者である必要があります。

母親は米国籍なので、父親のBさんの日本国籍の有無がポイントになりますが、BさんはC君が出生する前に自己の志望により米国籍を取得しており、その時点で日本国籍を喪失しているため、C君の出生時には両親とも日本国籍は無いわけで、C君の日本国籍は無効です。

Bさんが国籍喪失届を提出していなかった故に、戸籍にはBさん及びC君が日本国籍者として記載されていますが、事実に基づかない誤った記載であるため訂正する必要があります(Bさんが国籍喪失届を提出することでBさんは除籍(戸籍上も日本国籍を失う)となり、C君については日本国籍を持ったことが無いので、そもそも戸籍に記載されていること自体が誤りであるとして戸籍が訂正されます)。

※C君が家庭を築き子供D君が出生した場合(Bさんの孫)、D君の日本国籍も無効となります。

引用:在ニューヨーク日本国総領事館「日本国籍をお持ちで米国籍等を取得された方,これから取得される方へ(日本国籍について正しい理解のために)

大使館・総領事館での証明書申請時

大使館や総領事館では、元日本人でも申請できる証明書がいくつかあります。例えば、出生証明書居住証明書署名証明書といった証明書です。これらの証明書は、在住国での婚姻手続き時や、日本での年金受給や遺産相続、不動産登記などの手続き時に必要になります。

これらの証明書は、日本人であるか、元日本人であるかによって、証明書の内容や料金が変わってきますので、大使館・領事館窓口での申請の際には、日本国籍の有無を確認されます。

<居住証明書や署名証明書は大使館や総領事館に行かないと取得できない?>

居住証明書

日本から年金をもらうためには、日本年金機構から生存確認目的で年に一度送られてくる「現況届」に添えて、大使館・総領事館で作成してもらった「居住証明書」(元日本人の場合)を返送する必要があります。

ただし、大使館・総領事館に行かなくても、在住国で別の方法で取得した居住の証明書が認められる場合があります。(例えば米国なら、公証人により宣誓口述書(Affidavit)に居住の認証を受けたものが認められるそうです。くわしくは、日本年金機構に問い合わせてみてください。)

署名証明書

大使館・総領事館に行かなくても、在住国の公証人や判事に作成してもらった署名証明書が認められる場合があります。

登記所での不動産登記手続き(相続登記)については、外国の公証人が作成した署名証明書が有効である旨、法務省のホームページに明記されています。

居住地が日本の在外公館の所在地と離れている場合など、領事が作成した署名証明を取得することが困難なときは、外国の公証人が作成した署名証明を添付して登記の申請をすることも認められています。

引用:法務省「外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて

登記所での不動産登記手続き(相続登記)以外の手続きについては、認められるかどうかは提出先機関の判断次第です。

登記所での不動産登記手続き(相続登記)以外の、遺産分割協議書、自動車名義変更(廃棄)手続、銀行口座の名義変更に係る手続、その他、各種契約・申請等に係る手続において提出する書類について、居住国(地)の公証人等が作成した署名証明で認めるかの判断は提出先機関において行われることとなりますので、これらの手続において公証人等による署名証明を希望される場合は、事前に当該提出先に御確認頂きますようお願いいたします。

引用:在デトロイト日本国総領事館「日本国内の不動産登記手続に要する署名証明について

日本での出入国審査や空港でのチェックイン時にばれることはある?

自己意志で外国籍を取得し日本国籍を喪失した人が、外国籍取得以前に持っていた日本のパスポート(=有効期限が残っているかどうかにかかわらず、日本国籍喪失時点で失効)を提示して日本に出入国することは違法行為です。

空港でチェックインする際には、航空会社の職員さんからどうこう言われることはないでしょう(航空会社の職員さんにはわからないことですし、そもそも航空会社の職員さんの仕事ではありません)。

「日本国籍喪失後日本のパスポートで実際に入国し出国したけれど、出入国審査官にばれなかった。問題なく出入国できた」という話を時々耳にします。

(外務大臣から旅券返納命令が出ている、日本国籍喪失の事実がデータベースに登録されている、というのでなければ、通常は、日本出入国の際、日本のパスポートを没収されてしまうことはないと聞いたことがありますが...)

ですが、もし不正に日本に入国した(有効ではない日本のパスポートで入国した)ことが判明した場合、入管で入管法3条違反者(不法入国者)として退去強制手続きを途中まで行い、不法滞在状態の外国人として「在留特別許可」申請を行わなければならなくなります。

「在留特別許可」とは?

不法残留や不法入国などで日本に不法滞在している退去強制対象外国人に、法務大臣が特別に在留資格を与える制度。

不法滞在状態の外国人は本来日本から出国するか退去強制されなければならないが、 出入国管理及び難民認定法(入管法)第50条に従い、法務大臣はその裁量により在留を特別に許可することができる。在留特別許可を与えるか否かは法務大臣の自由裁量である。

(中略)

以下のような場合には、法務大臣は在留を特別に許可することができる。

(中略)

かつて日本国民として日本に本籍を持っていたことがあるとき(入管法第50条第1項第2号 日本籍離脱者や特別永住資格者)

引用:ウィキペディア「在留特別許可

【補足】日本国籍喪失後、日本に長期滞在する方法は? 再び日本国籍を取得できる?

日本国籍喪失後、日本に長期滞在する方法

日本国籍喪失後、例えば親の介護などで日本に長期滞在する必要が出てきた場合(例えば、アメリカ国籍やカナダ国籍を取得した元日本人が90日を超えて日本に滞在する必要が出てきた場合)、日本人の子として出生した元日本人については「日本人の配偶者等」という在留資格で日本に長期滞在できます。(在留期間の更新は何度でもできますし、要件を満たせば永住権も取得できます。)

日本人の子として出生した元日本人(海外在住)が長期滞在ビザを取得する方法については、別記事に詳しくまとめています。

日本国籍喪失後、再び日本国籍を取得することは可能

日本国籍喪失後、例えば、老後は日本で過ごしたいと思うようになったりと、状況が変わった場合には、再び日本国籍を取得したいと思われる方もいらっしゃるでしょう。

そういった場合、日本に生活の本拠である住所を置く必要はありますが、元日本人は、通常の外国人の帰化申請よりも必要条件(居住要件や生計能力要件)がゆるい方法(簡易帰化)で帰化申請できます(国籍法第8条第1項)。

ただし、外国人が日本に帰化(日本国籍を取得)する際の条件のひとつに「重国籍防止条件(喪失条件)」があります。

重国籍防止条件(国籍法第5条第1項第5号)

帰化しようとする方は、無国籍であるか、原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失することが必要です。

なお、例外として、本人の意思によってその国の国籍を喪失することができない場合については、この条件を備えていなくても帰化が許可になる場合があります(国籍法第5条第2項)。

引用:法務省「国籍Q&A – Q9: 帰化の条件にはどのようなものがありますか?

つまり、日本に帰化しようとする人は、それまでの外国籍を離脱し無国籍になるか(←もしその国が一瞬でも無国籍になることを認めている場合に限りますが)、日本国籍取得後にそれまでの外国籍を離脱することを誓約する必要があります。

「国際結婚を考える会(JAIF)」のHPに、米国籍を取得し日本国籍を喪失した後、再び日本国籍を取得した人が書かれた詳しい体験談が掲載されています。

まとめ

以上、非常に長い記事になりましたので、まとめます。

  • 自らの意思で外国籍を取得した場合は、自動的に日本国籍を失う。一瞬たりとも二重国籍の状態にはならない。
  • 一般に、未成年の外国籍取得を親権者が代理で行った場合も、自らの意思で外国籍を取得したと見なされ日本国籍を喪失する。
  • 自らの意思で外国籍を取得した場合、外国籍取得後(日本国籍喪失後)3ヶ月以内に国籍喪失届を出さなければならないとされているが、実のところ、海外在住の日本国籍喪失者本人には届出義務はない。だが、大使館・総領事館での事務手続きの際、国籍喪失届を出すように求められているのが現状。
  • 国籍喪失届を出すと、戸籍から抹消(除籍)されるが、その後も元日本人であることの証明として「除籍謄本」あるいは「国籍喪失した人が除籍となった旨が記載されている戸籍謄本」を取得できる。
  • 国籍喪失届を出さないと、戸籍上は日本人のままなので、戸籍謄本を取得でき、虚偽の記載をすれば新たに日本のパスポートを取得できてしまう可能性がある。=「偽装日本人」「隠れ(見かけ)重国籍者」と呼ばれる状態。
  • 日本国籍を喪失していることがばれるのは、海外にある日本国大使館・総領事館の窓口で、パスポートや証明書などの申請時や、戸籍(婚姻や出生)の届出時に、在住国の滞在許可証提示を求められ提示できない時。
  • 自らの意思で外国籍を取得した時点で、日本のパスポートも失効する。
  • 日本国籍喪失後、日本のパスポートを使用したり、パスポート申請書に「外国籍は取得していない」と虚偽の記載をして新たにパスポートを取得したりした場合は、旅券法違反となり、5年以下の懲役または300万円以下の罰金(または、その両方)に処せられる可能性がある。

海外に住んでいると、仕事や生活の必要に迫られて、在住国の国籍を取得した方が都合がよいと思える場面はありますよね。

国によっては、在住国の国籍を取得すると、税制や年金受給などで優遇される場合があります。

米国のように、在住国の国籍を取得せずに永住権保持のままだと、日本人配偶者の呼び寄せが大変で、夫婦なのに長い間一緒に暮らせない、という国もあります。

永住権を保持するには居住条件を満たし続けなければならない(例えばカナダだと5年のうち合計2年以上カナダに居住しなければ永住権は保持できません。米国はもっと条件が厳しいと聞いています)ので、日本や第三国に長期で滞在することもままならない場合があります。

選挙にも参加したいですよね。

私も海外生活長いですので、在住国の国籍を取得される方のお気持ちはとてもよくわかります。

私は、もしフランス国籍があればヨーロッパで国境を気にせずいつでも働けるのに、って思います(夫がフランス人でも、日本人の私はどこの国でもEU市民の配偶者として就労可能な滞在許可を申請する必要があり、許可だってすぐに下りません。ドイツでは、外国人局の手続きミスもあり、就労可能な滞在許可証を入手できるまで約1年かかりました...)。

もし日本が自己意志で外国籍を取得しても日本国籍を保持することを認めていたなら、私もとっくの昔に外国籍を取得していたでしょう。

(重国籍が当たり前だと思っている国の)外国人の友人たちに「Kokoはフランス国籍取るんでしょ?」「カナダ国籍取るんだよね?」と聞かれ、「いや、日本の法律では、自分の意思で他国籍を取得すると、取得した瞬間に日本の国籍を失ってしまうんだよ。」と説明する度にどれだけびっくりされてきたことか...

ただ、現在の国籍法では自己の意思で外国籍を取得すると日本国籍を失ってしまうことが定められている以上、軽い気持ちで、日本国籍を喪失しているのに日本のパスポートを使い続けたり申請したりするというリスクを冒すべきではありません。

現在日本では、国籍法第11条第1項は憲法違反だと訴える訴訟が次々に起こされています。今後も、このような裁判の動きや国籍法改正に向けた運動を見守っていきたいと思っています。

現在日本で進行中の、国籍法第11条第1項(国籍はく奪条項)関連の訴訟

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