こんにちは!ドイツ在住のKokoです。
2021年4月以降、日本のパスポートに旧姓を併記するための要件が緩和されたので、婚姻後の苗字に続けて括弧書きで旧姓を入れる方が増えているようですね。
旧姓以外では、国際結婚をして在住国で使用している外国人配偶者の苗字や、重国籍者が日本以外の国で使用している苗字やミドルネームなど(日本の戸籍には記載されていないもの)を別姓・別名として括弧内に表記することが認められています。

別名併記の希望者には、重国籍者、国際結婚をした人が多いです。
さて、どの航空会社を利用する場合でも「搭乗時に使用するパスポートの氏名表記」と「航空券の氏名表記」は完全に一致していなければならないとされています。
旧姓・別名併記(括弧書き氏名)がある日本のパスポートで航空券を予約する場合、括弧内の氏名は含めるべきでしょうか?省くべきでしょうか?
結論から言うと、多くの航空会社が括弧内の旧姓・別名を除いて航空券を予約するよう案内していますが、一部異なる案内をしている航空会社もあるので注意が必要です。
この括弧書きのシステムは世界標準ではない日本独自のシステムなので、海外への渡航時にトラブルにならないよう航空券予約前に利用予定の航空会社に確認しておかれると安心です。
この記事で分かること
- そもそも別名併記制度とは?(日本独自のシステムであることを知っておこう)
- 航空券予約時の旧姓・別名併記の扱いについて、実際にいくつかの航空会社に問い合わせて得られた回答
- 渡航先国で旧姓・別名併記のある日本のパスポートを提示すると出入国審査官などに説明を求められることがある(準備しておこう)
渡航関連の問題は人それぞれによって条件が異なりますし、また、航空会社のルールが突然変わることもあり得ますので、航空券ご予約前に必ずご自身で航空会社にご確認ください。
パスポートの別名併記制度は日本独自のシステム


「旅券(パスポート)の別名併記制度について」
パスポートの別名併記制度とは?
日本のパスポートは、
- 旧姓
- 国際結婚をした人が在住国で使用している外国人配偶者の苗字
- 重国籍者が日本以外の国で使用している苗字
- 重国籍者が日本以外の国で登録しているミドルネーム
などを、括弧内に記載できる「別名併記制度」を採用しています。
外務省のホームページでは「別名併記制度」について次のように説明しています。
1.
日本の旅券は、ICAO(国際民間航空機関)文書に準拠して作成され、旅券面の氏名は、戸籍に記載されている氏名を記載することとしています。
ただし、旅券申請者からの申出を受け、外務大臣又は領事官は、我が国又は外国の政府機関又は地方公共団体が発行した書類等により戸籍に記載されている氏名以外の呼称が社会生活上通用しているものであることが確認され、かつ、申請者の渡航の便宜のため特に必要であると認める場合に、戸籍に記載されている氏名に加えて当該呼称を併記することができることとなっています。
2.
旅券面に記載される場合、旧姓は「旧姓/Former surname」、それ以外の別姓は「別姓/Alternative surname」、別名は「別名/Alternative given name」の括弧書きの説明が付記されます。
引用: 外務省「旅券(パスポート)の別名併記制度について」
つまり、
- 日本のパスポートに記載されるのは戸籍上の氏名のみ。
- 旧姓・別名併記を希望する場合、申請すれば(←パスポート申請書に旧姓・別名併記の記載欄有)戸籍上の氏名に続けて括弧内に旧姓・別名の記載が可能。
- 旧姓・別名併記は、あくまで申請者の渡航や海外生活での便宜のために必要だと判断された場合のみ。申請時に日本または在住国が発行した公的書類による証明の提示が必要。
ということですね。



どんな有名人でも、芸名やペンネームの別名併記は認められません!
2021年3月以前に発行されたパスポートでは、括弧内の名前が旧姓なのか別姓・別名なのか、見ただけではわかりませんでした。
ですが、2021年4月1日以降に発行されたパスポートより、氏名記載欄に次のような説明書きが加わり、旧姓なのか別姓・別名なのかがぱっと見てわかるようになりました(上の画像参照)。
- 括弧内の名前が旧姓の場合
- (旧姓/Former surname)
- 国際結婚や重国籍の人が旧姓以外の苗字やミドルネームなどを記載している場合
- 姓なら、(別姓/Alternative surname)
- 名なら、(別名/Alternative given name)



この説明書きにより、渡航先国の出入国管理官も括弧内の名前が旧姓なのか別姓・別名なのかがわかりやすくなりますね。
パスポートの別名併記制度は日本独自のシステム
まず、パスポートの別名併記制度は、世界標準ではない、日本独自のシステム だということを知っておきましょう。



私は、仕事柄、色々な国のパスポートを見たことがありますが、括弧書きのあるパスポートなんて日本以外では見たことがありません!
外務省は、括弧内に記載された旧姓・別名での航空券取得について、次のように案内しています(上の説明文の続き)。
3.
右併記は戸籍上の氏名に続けて、括弧書きで記載されますが、ICAO文書には規定されていない例外的な措置であるため、ICチップ及びMRZ(Machine Readable Zone)には記録されません。
このため、旅券面に記載されていたとしても、査証及び航空券を右呼称で取得することは困難と考えられますので、御注意ください。
引用: 外務省「旅券(パスポート)の別名併記制度について」
そうなんです、括弧内の旧姓・別名は、ICチップには記録されていないんです。
また、MRZ(機械読取領域)にも含まれていません。
MRZとは?
MRZ= Machine Readable Zone(機械読取領域)。パスポートの顔写真ページの下部に印字されている2行の文字列データのこと。この部分をパスポート読み取り機にかざすと、身分事項を読み取れる。





MRZの一行目。左から順に「P」はパスポート、「JPN」はパスポート発行国である日本。
その後に「GAIMU<<SAKURA」とありますが、確かに別名はMRZには含まれていませんね。
外務省は、
ICチップにもMRZにも含まれていない旧姓や別名では、査証(ビザ)や航空券を取得することは困難だと考えられる
と注意喚起しています。
確かに、実際に、多くの航空会社が括弧内の旧姓や別名を除いて航空券を予約するよう案内しています。
ただし、調べてみたところ、一部、異なる案内をしている航空会社もあるので注意が必要です。
括弧内の旧姓や別名を航空券の予約名に含める? 含めない?
パスポートと航空券の氏名表記は完全一致が原則
まず、航空券を予約する時、「搭乗時に使用するパスポートの氏名表記」と「航空券の氏名表記」は完全一致していないといけません。
この点については、各航空会社に問い合わせを行った際に念押しされました。
航空券予約時に名前を少しでも間違ってしまった場合の航空会社の対応はまちまちですが、買い直しになってしまう場合や名前の訂正に数千円の手数料が必要になってしまう場合も多いですので注意しましょう。
さて、「完全一致」しないといけないことはわかりました。
では、括弧内の旧姓・別名併記の扱いはどうなるのでしょうか?
本当に外務省の言うように「 ICチップにもMRZにも含まれていない旧姓や別名では、航空券を取得することは困難 」なのでしょうか?
括弧内の旧姓・別名は航空券の予約名に含める? 含めない? 各航空会社の回答
いくつかの航空会社のホームページで確認、または、直接問い合わせたところ、次のように少しずつ回答が異なっていました。
- 括弧内の名前は含まないで予約
- ANA
- デルタ航空
- 原則括弧内の名前を含まないで予約するよう案内しているが、別名併記を含めての航空券予約を強く希望する場合は予約名に含んでもよい(ただし、出入国に不安がある場合は括弧内の名前を含めず予約するよう案内している)
- JAL
- 括弧内の名前がミドルネームである場合に限り予約名に含む
- アメリカン航空
- 括弧内の名前は予約名に含んでも含まなくてもどちらでもよい
- シンガポール航空



ANA、JALは、ホームページにもきちんと案内があり、メールでの問い合わせに対する回答も的確。さすが日本の航空会社!です。
ですが、航空会社によっては「このような問い合わせはあまりありませんので...」と一度確認してから回答したり、途中で回答内容が変わったりしたこともありました...
正直、「日にち(担当者)を変えて二度ぐらい問い合わせした方がいいのでは?」と感じることもありました。
ですので、必ずご自身で問い合わせ、しっかり確認してくださいね。
ANAの場合「括弧内の名前は含めない」
ANAのホームページでの案内は次の通り。
国際線ご利用時は、パスポート名と航空券名が一致しないとご搭乗いただけません。
予約時の氏名入力はパスポート名と完全一致させてください。
予約後にご搭乗者氏名の変更(姓名の順番、スペル修正含む)はできませんので以下の内容にご注意ください。
<注意が必要なケース>
①ご結婚などにより、姓が変更になった場合
旧姓のパスポートをご利用の場合は、旧姓でご入力ください。
新姓・旧姓が併記されている場合は、新姓でご入力ください。
(中略)
②パスポートのお名前に「」、()など括弧が含まれている場合
括弧を含む部分を外してご入力ください。
例1 : TAKAHASHI ARIN(ALENE) → 名:ARIN 姓:TAKAHASHI
例2 : JOSÉ (MANUEL) MARTÍNEZ PÉREZ → 名: JOSE 姓: MARTINEZ PEREZ
例3 : TAKAHASHI EMI(PASCALE) → 名: EMI 姓 : TAKAHASHI
引用:ANA「予約時の氏名入力について[国際航空券]」
JALの場合「原則、括弧内の名前は含めない。強く希望するなら含めてもよいが、不都合や面倒が生じる可能性あり」
JALのホームページでの案内は次の通り。
申請するパスポートのお名前とご予約のお名前の表記が一致していることをご確認ください。
※保安上の理由により、表記が同じではない場合、ご搭乗いただくことができません。
※航空券のお名前の変更は承れません。
引用:JAL「よくあるQ&A – 国際線 – 現在搭乗時に有効なパスポートが手元にないのですが、予約はできますか。」
Q: パスポート上の名前にカッコがついています。ウェブ予約の際、氏名はどのように入力すればいいですか?
A: パスポートにカッコ付のお名前が併記されている場合は、カッコ外のお名前で予約を作成してください。
カッコ付のお名前を予約に含めたいお客さまは、カッコ外のお名前の後に空白を入れず、続けてカッコ内のお名前を入力してください。
(例)
パスポート上の表記→ 姓:YAMADA(SMITH) 名:HANAKO
ウェブ予約の際の入力 → 姓:YAMADASMITH 名:HANAKO
なお、カッコ付きのお名前を続けて入力してご予約された場合、KIOSKでの自動チェックインサービスはご利用いただけません。チェックインの際は空港チェックインカウンターへお越しください。
引用:JAL「よくあるQ&A – 国際線 – パスポート上の名前にカッコがついています。ウェブ予約の際、氏名はどのように入力すればいいですか?」



↑「カッコ付のお名前を予約に含めたいお客さまは、カッコ外のお名前の後に空白を入れず、続けてカッコ内のお名前を入力してください。」の部分が気になったので、メールで問い合わせてみました。
(私の質問)
JALでは(ANAと違って)希望すれば括弧内の名前も含めて航空券を予約できるとホームページに書いてあります。括弧内の名前も含めて航空券を予約した場合、日本では大丈夫だとしても、例えば米国やカナダでは問題になってしまうことはありませんか(パスポートの機械読取領域やICチップには含まれていないため)。
(回答)
弊社では、パスポート氏名欄に括弧で姓名が付記されている場合も、原則、括弧外の姓名で航空券をお申し込みいただいております。
なお括弧外の姓名の表記を強くご希望される場合、以下の点についてあらかじめご理解を賜りますようお願い申し上げます。
自動チェックイン機は利用不可。有人カウンターでチェックインが必要。
マイルは搭乗後の事後登録のみ可。
名前が併記されることにより、空港や機内でお客様のお名前を誤ってお呼びする可能性があること。
渡航先への出入国についてご不安な場合は、括弧外の姓名で航空券をお申し込みくださいますよう、お願いいたします。
引用:”JAL eコンタクトセンター” <jal-websupport@ask.jal.co.jp>からのメールでの回答(2021年7月10日)



というわけで、よっぽど特別な事情がない限り、括弧内の氏名を含まずに航空券を予約した方が安心ですね。
デルタ航空の場合 「括弧内の名前は含めない」
日本のパスポートの氏名表記に合わせて航空券を予約する場合、括弧内の名前は含めず航空券を予約してください。
デルタ航空(日本050-3850-8388)の回答(2021年7月15日)
アメリカン航空の場合「括弧内の名前がミドルネームの場合に限り含める」
日本のパスポートの氏名表記に合わせて航空券を予約する場合、もし括弧内にある名前がミドルネームである場合に限り、ミドルネームも含めて航空券を予約してください。
アメリカン航空(日本03-4333-7675)の回答(2021年7月15日)



ANA、JAL、デルタ航空と違う新ルール登場!
と思いきや、ネット検索し色々な人の経験談などを読んだところ、航空券予約時は重国籍者のミドルネームの有無は問題にならないようです(航空券予約時にミドルネームが入っていなくても、あとで航空会社職員が適宜入力してくれるようです)。
ただやはり、念のため、予約前に航空会社に確認し指示に従った方が安心です。
シンガポール航空の場合「括弧内の名前は含んでも含まなくてもどちらでもよい」
お問い合わせいただきました件でございますが、括弧に表記されているお名前に関しましては、含んでいても、含まれていなくても問題ございません。
(括弧に含まれていないお名前は省略できません。)
シンガポール航空からのメールでの回答(2021年7月19日)
渡航先で旧姓・別名併記のあるパスポートを提示すると説明を求められることがある
渡航先の出入国審査官、航空会社職員は別名併記制度について知っているとは限らない
日本で働く航空会社職員や日本の出入国審査官はもちろん別名併記制度のことを知っています。
ですが、渡航先の国では、航空会社職員や出入国審査官は日本独自の別名併記制度のことを知らないことがあり、「この名前は何ですか?なぜ括弧書きなんですか?」などと説明を求められる可能性があります。
外務省のホームページに次のように案内があります。
渡航先国での入国審査では、旅券のICチップ及びMRZに記録されている氏名、査証(ビザ)(米国のESTA等を含む)に記載された氏名、航空券に記載された氏名が照合され得ます。
そのような場面等で渡航先国の出入国管理当局等から説明を求められる場合には、旅券の所持人御自身から旅券に併記された呼称について御説明いただく必要が生じますところ、都道府県の旅券申請窓口及び在外公館で配付しているリーフレット、または以下にあります英語版資料を御活用ください。
引用: 外務省「旅券(パスポート)の別名併記制度について」
「別名併記リーフレット」などを準備して渡航しよう
というわけで、外国で、旧姓・別名併記がある日本のパスポートを提示する予定がある人は、渡航先の出入国審査官や航空会社職員から説明を求められた場合に備え、次の①②のいずれかを用意しておかれることをおすすめします。
- 外務省ホームページの「SYSTEM TO INDICATE ALTERNATIVE SURNAME AND/OR ALTERNATIVE GIVEN NAME ON JAPANESE PASSPORT」(「旅券(パスポート)の別名併記制度について」の英語版)をプリントアウトしたもの
- 日本の各都道府県のパスポート申請窓口、海外の日本国大使館・総領事館窓口で配布されている「別名併記リーフレット」(2021年4月発行のものが最新)






余談ですが、「別名併記リーフレット」が作成され、外務省HPへ説明文が記載されることになったのは、パスポートに旧姓併記があり渡航先での説明時やビザ取得時に不便を感じていたある女性がツイッターでつぶやいたのがきっかけです(ツイートに気が付いた河野太郎外務大臣(当時)がすぐに対応を指示!)。
【まとめ】パスポートに旧姓・別名併記がある場合の航空券予約
パスポートの氏名(戸籍上の氏名)に続いて、括弧内に旧姓・別名が記載されていると、渡航時の手続きや渡航先国での身分証明がスムーズだったりするというメリットがあります。
ですが、日本のパスポートの「別名併記制度」は国際規格に準拠しない例外的な措置であり、括弧内の旧姓・別名はパスポートのICチップにもMRZ(機械読取領域)にも含まれていません。
ほとんどの航空会社は旧姓・別名は含まずに航空券を予約するよう案内していますが、航空会社によっては、希望する場合は旧姓・別名を予約名に含めることができると言っている会社があったり、別名がミドルネームである場合に限り予約名に含めるよう案内している会社があったりします。旧姓・別名を含めても含めなくてもどちらでもよいと案内している会社もあります。
ですので、旧姓・別名併記のある日本のパスポート氏名に合わせて航空券を予約される方は、海外渡航時にトラブルにならないよう、利用予定の航空会社にしっかり確認しましょう(記事本文中の各航空会社の回答は、今後変わる可能性もありますので、必ず予約前にご自身でご確認ください)。
また、渡航先では、航空会社職員や出入国審査官などが別名併記システムのことを知らず、説明を求められることがあります。その場合に備えて、外務省ホームページから説明文(英語)をプリントアウトするか、「別名併記リーフレット」を入手するかして、説明を求められた時に提示できるようにしておくと安心です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
お役に立てましたら幸いです。