こんにちは!ドイツ在住のKokoです。
皆さん、日本へ入国(帰国)する際は「日本のパスポートがないと日本人として入国(帰国)できない」と思っておられませんか?
実は、あまり知られていませんが、重国籍者で日本以外の国のパスポートのみお持ちの場合、やむを得ない事情があれば、日本入国時に入国審査官に戸籍謄本を提示し日本人であることが証明できれば日本人として入国(帰国)できるんです。
ここで言う「重国籍者」には、自己意思で外国籍を取得し日本国籍はすでに喪失している、けれども、日本には「国籍喪失届」を出していないので戸籍上は日本人のまま、という人は含まれません。
特に、外国で生まれたばかりの赤ちゃんと日本へ里帰りしたい場合など、大使館や総領事館から遠く離れた場所に住んでいると、赤ちゃんの日本のパスポートを作るのは一苦労です。

遠方にお住まいの場合、条件を満たせばパスポート申請については郵送で行えますが、パスポート受領については、生まれたばかりの赤ちゃんであっても必ず本人確認が必要なので大使館・総領事館まで連れていかないといけないんですよね...
そのような場合、生まれたばかりの赤ちゃんの外国パスポートだけ作って、赤ちゃんの出生が記載された戸籍謄本原本を日本から取り寄せ、外国パスポート+戸籍謄本を提示することで日本に日本人として入国できます。
例えば、アメリカやカナダのパスポートを提示して入国すると日本には最長90日間しか滞在できませんが、戸籍謄本を提示し日本人として入国すると、日本のパスポートを提示して入国した場合と同様に90日以上日本に滞在できます。
日本にいる間に赤ちゃんの日本パスポートを作り、日本からの出国時には日本パスポートを提示して出国しないといけませんが、日本国内であれば外国のように飛行機に乗って日本のパスポートを受領しに行かなければならない、ということはないので労力とコストが少なくて済みますよね。
では、外国のパスポートと戸籍謄本を提示して日本に入国(帰国)する方法やその際の注意点などについて詳しくみてみましょう。
戸籍謄本があれば日本人として入国できるってどこに書いてあるの?


国際法の考えとして、日本国籍を持っている重国籍者は、日本政府から日本人として扱われます。
法律では、日本人は、日本への出入国時、日本のパスポートを提示しなければならないとされています。
出入国管理法及び難民認定法第61条に定められている
原則として、日本のパスポートを提示して日本出入国を行うことになっていますが、出入国管理法及び難民認定法第61条に、「有効な旅券を所持することができないときは、日本の国籍を有することを証する文書」を提示することで日本人として入国(帰国)できると定められています。
日本の国籍を有することを証する文書 = 戸籍謄本 です。
(日本人の帰国)
第六十一条 本邦外の地域から本邦に帰国する日本人(乗員を除く。)は、有効な旅券(有効な旅券を所持することができないときは、日本の国籍を有することを証する文書)を所持し、その者が上陸する出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官から帰国の確認を受けなければならない。
出入国在留管理庁のホームページにも記載あり
また、出入国を管理している、出入国在留管理庁(元入国管理局)のホームページにも次の記載があります。
日本人が帰国することは、国民が当然に有する権利として解されています。
このような権利を有する日本人の帰国を外国人の入国と同様の手続とすることは適当でないので、入管法は日本人の帰国手続について外国人の入国手続とは別な方法を規定しています。
日本人の帰国の手続は、入国審査官が帰国を確認し、原則として旅券に帰国の証印をすることになっていますが、やむを得ない事情により旅券を所持していない場合には、帰国証明書を交付することによって行うと規定されています。
これは、たとえ旅券を所持することがなくても日本の国籍を有することを証する文書を所持するなどして、日本人であることが確認されれば、帰国することに支障がないことを明らかにしたものです。
引用:出入国在留管理庁「出入国審査手続 – 入国・帰国手続<日本人の帰国(入管法第61条)>」
戸籍謄本を提示して日本に入国 (帰国) する方法
入国審査場で、日本人の列に並び、
- 日本以外の国のパスポート
- 戸籍謄本(全部事項証明)の原本
を提示する、それだけです。
戸籍謄本は、発行後6ヶ月以内のものでなければならないとされていますのでご注意ください。
戸籍謄本が発行後6ヶ月以内のものでなければならないことはホームページなどには記載されていなかったのですが、出入国在留管理庁のインフォメーションセンターにメール(info-tokyo@i.moj.go.jp)で質問し教えてもらいました。
二重国籍者の出帰国の確認の場合、原則的には日本旅券により確認を受けて頂きますが、日本旅券が間に合わない場合は、帰国のための渡航書、又は6ヶ月以内に発行の戸籍謄本により日本人としての出帰国の確認を行います。
出入国管理局インフォメーションセンターからのメールでの回答(2021年4月9日)
戸籍謄本の提示により日本国籍を持っていることが確認できた場合は、日本人の帰国として扱われ、日本以外の国のパスポートに「帰国」のスタンプが押されます。
この時、入国審査官は、帰国スタンプの箇所に「重国籍者」と記載するとされています。
戸籍謄本を提示して日本に入国 (帰国) した後にすべきこと
日本滞在中に日本のパスポートを作り、日本のパスポートで出国する
戸籍謄本を提示して日本に入国(帰国)した場合は、日本滞在中に日本のパスポートを作ります。
日本では、住民票を入れなくても、海外からの「一時帰国者」として実家やホテルの住所を「居所(きょしょ)」として、居所のある都道府県の申請窓口でパスポートの申請(居所申請)ができます。
そして、新しく作った日本のパスポートで日本から出国します。



日本人として入国(帰国)したら必ず日本人として出国しなければなりません。
日本滞在中に日本のパスポートを作る以外に何か特別な手続きが必要?
戸籍謄本提示により入国(帰国)した場合、日本滞在中に日本のパスポートを作る他には特に何の手続きもせず、普通に日本のパスポートを提示して出国してよいのかどうか、この点が気になりましたので出入国在留管理庁のインフォメーションセンターにメール (info-tokyo@i.moj.go.jp) で問い合わせてみました。
(私の質問)
外国のパスポートと戸籍謄本を提示し、日本に日本人として入国(帰国)し、日本でパスポートを作ります。この場合、例えば管轄の出入国管理局に「外国のパスポートと戸籍謄本の提示で日本入国(帰国)し、その後日本のパスポートを作った」旨を報告する必要はありますか。そのまま何も言わず、新しく作った日本のパスポートで出国して大丈夫ですか。
(回答)
外国旅券と戸籍謄本により帰国したことを、管轄の出入国管理局に報告する必要はありません。
出国時に審査官に聞かれた場合は、事実関係をお伝えください。
出入国管理局インフォメーションセンターへの私の質問及び回答(2021年4月9日)
というわけで、日本のパスポートさえ作れば、特に何の手続きもせず普通に日本のパスポートで出国して大丈夫とのことです。
最後に
本記事では、有効な日本のパスポートを所有しない重国籍者が、外国のパスポートと戸籍謄本を提示して日本に入国する方法や注意点、その根拠となる法律などについて解説しました。
戸籍謄本原本を日本から郵送してもらうという手間はありますが、戸籍謄本を提示することで日本人として入国でき、日本に3ヶ月以上滞在できます。
外国のパスポートで入国した後に日本に3ヶ月以上滞在できる方法として、最寄りの出入国管理局または支局・出張所に出向き、戸籍謄本を提示し、外国人としての在留資格を抹消する方法もありますが、入国時に戸籍謄本を提示して入国する方法の方が楽です。