国籍留保制度とは? 海外で出産し国籍留保届を忘れたら大変なことに

国籍留保とは? 海外で生まれた子供が日本国籍を失わないために3ヶ月以内に国籍留保届を出そう
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こんにちは!フランス在住のKokoです。

Koko

私は以前、戸籍・国籍関連の仕事をしていたことがあります。

さて、海外でも、「日本人から生まれた子供は日本国籍を取得できて当然!」

と思っている方がおられますが、そんなことはありません。

海外で生まれ、出生により外国籍も取得した場合は、出生から3ヶ月以内に出生届(国籍留保届)を提出しないと、たとえ両親が日本人であってもお子さんは日本国籍を失ってしまいます!!

例えば、アメリカ(カナダ)で子供が生まれた日本人夫婦。

アメリカ(カナダ)は生地主義を採っているので、お子さんは生まれつき米国籍(カナダ国籍)を取得します。

この場合、出生から3ヶ月以内に日本に出生届(国籍留保届)を出さないと、両親とも日本人なのに、お子さんに日本国籍がないという衝撃の事態になります。

国籍留保について皆さんは次のような疑問をお持ちではないでしょうか。

「国籍留保」とは?
海外で日本人から生まれた子はみな国籍留保しないといけないの?

日本で里帰り出産するんですが、日本で出生した子についても国籍留保が必要ですか?

「出生届」とは別に「国籍留保届」っていう届出があるの?
国籍留保に必要な書類は?

3ヶ月以内に国籍留保し忘れたらどうなりますか?
もし国籍留保の手続きをしたら、何歳まで国籍留保できるんですか?

本記事では、こういった疑問にお答えします。

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国籍留保制度とは? 国籍留保の届出期限は?

日本には、海外で生まれた日本人の子を対象とした「国籍留保制度」という制度があります。

まず、さらっと、国籍留保制度や、国籍留保届の提出期限を定めている法律をみておきましょう!

国籍留保制度が定められている「国籍法第12条」

出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。

国籍留保の届出期限が定められている「戸籍法第104条」

国籍法第十二条に規定する国籍の留保の意思の表示は、出生の届出をすることができる者(第五十二条第三項の規定によつて届出をすべき者を除く。)が、出生の日から三箇月以内に、日本の国籍を留保する旨を届け出ることによつて、これをしなければならない。

 前項の届出は、出生の届出とともにこれをしなければならない。

「国籍法第12条」と「戸籍法第104条」のポイントをまとめると

ポイントをまとめると、次の通りです。

  • 日本国外で生まれ、
  • 出生によって日本国籍と同時に外国籍も取得した子は、
  • 出生日から3ヶ月以内に、出生届と同時に日本国籍を留保する意思表示をしなければ、出生時にさかのぼって日本国籍を失う。

つまり、

日本人の子であっても、海外で生まれ、出生により外国籍を取得している場合は、出生日から3ヶ月以内にきちんと国籍留保の手続きをしないと、生まれつき日本国籍を持っていない扱いになってしまう

ということです。 

それでは、詳しくみていきましょう。

「出生により外国の国籍を取得する」とは?

「出生により外国の国籍を取得する」とはどういうことなのでしょうか?

出生により外国の国籍を取得する主なケース

出生により外国の国籍を取得するケースは主に次の2つです。

  1. 婚姻関係にある、日本人の父または母と、血統主義を採る外国の国籍を有する母または父との間に生まれた場合(例:フランス、ドイツ、フィリピン)
  2. 生地主義を採る国で生まれた場合(例:アメリカ、カナダ、ブラジル)

血統主義とは?生地主義とは?

  • 「血統主義」は、誰の子であるかを基準にし、子は親の国籍を継承するという方式です。
  • 「生地主義(出生地主義)」は、どこで生まれたかを基準にし、出生した国の国籍が付与される方式です。

血統主義には、「父母両系血統主義」「父系優先血統主義」があります。

今の日本は 「父母両系血統主義」 を採っていて、父親か母親の一方が日本人であれば子に日本国籍が付与されます。

ですが、1985年の国籍法改正までは、父親が日本人である場合のみ子に日本国籍が付与されていました(父系優先血統主義)。1984年以前に外国人父と日本人母の間に生まれた子には日本国籍が付与されていませんでした。

Koko

「日本人の母から生まれた子は日本国籍を取得する」という、今皆さんが当然だと思っていることも、当たり前じゃない時代があったんです。

生地主義を採っている国で生まれた場合、親がどこの国籍を持っていても、例えばアメリカで生まれた子にはアメリカ国籍が、カナダで生まれた子にはカナダ国籍が無条件で付与されます。

つまり、日本人同士の夫婦でも、アメリカやカナダで出産した場合は、子供は出生によりアメリカ国籍やカナダ国籍を取得するってわけですね!

イランやネパールなどのように「父系優先血統主義」を採る国の国籍をもつ母と日本人父と間に生まれた場合(父母が婚姻関係にある場合)に、お子さんが外国籍を取得しないケースがあります。

もし出生により外国籍を取得しない場合は、日本国籍しかありませんから、日本国籍留保の必要はありません。

※ただ、今後法律が変わる可能性もありますので、必ずご自身の届出前に最新情報をご確認ください。

国によって、それ以外にも、出生により外国籍を取得できる色々なケースがあります。

血統主義を採る国に住んでいる日本人夫婦の子であっても外国籍を取得できる場合がある

日本人夫婦の子なんだけど、血統主義の国に住んでいるから、外国籍は取得できないよね。
よって国籍留保は不要!

と思われるかもしれませんが、例外がある国があります。

例えば、ドイツでは、両親ともに日本人であっても、子の出生時に、両親の一方がドイツ国籍法に定める条件(8年以上合法的にドイツに在留し、かつ無期限の滞在許可を所持)を満たしていれば、自動的にドイツ国籍を付与されます。

子の父の国が血統主義を採っていて、子の父と婚姻関係にない場合でも、外国籍を取得できる場合がある

子の父の国は血統主義を採っているんだけど、私は彼と結婚してないの。
だから、子は父の国籍は取得できないから、国籍留保は不要よね。

と思っていても、外国人父の本国法が認知制度事実主義を採っている場合、必要な手続きを行えば、非嫡出子(婚姻関係にない父母から生まれた子)であっても、生まれつき外国人父の国籍を取得する場合があります。

認知制度とは?事実主義とは?

  • 認知制度とは、結婚していない父母の間に生まれた子について、父が自分の子であると認めることで法律上の父子関係が成立する法制です。多くの国で採用されています。
  • 事実主義とは、結婚していない父母の間に生まれた子についても、事実としての父子関係(血縁関係)がある場合、認知を要することなく父子関係を認める法制のことです。中国、ニュージーランド、フィリピン、カナダの一部の州(オンタリオ州、ブリティッシュ・コロンビア州、ケベック州)などで採用されています。

例えば、認知制度を採用しているフランスでは、日本人母とフランス人父が結婚していなくても(出生子が非嫡出子であっても)、フランス人父からフランス方式による胎児認知がなされている場合、出生子は生まれつきフランス国籍を取得します。

また、フィリピンでは、日本人母とフィリピン人父が結婚していなくても(出生子が非嫡出子であっても)、フィリピン人父の本国法では事実主義が採用されているので、出生子は生まれつきフィリピン国籍を取得します。

出生による外国籍取得には様々な要因が関わってくるので、正確な情報入手に努めよう

子が出生により外国籍を取得するかどうかについては、次のような様々な要因が関係してきます。

  • 子の出生地(生地主義を採っている国?)
  • 父母の婚姻の有無
  • 父母の国籍、各国籍の取得条件(父母両系血統主義?父系優先血統主義?その他の条件)
  • 父母が婚姻していない場合、外国人父が子の出生前に認知(胎児認知)を行うかどうか?

など

日本人父と外国人母が婚姻関係にない場合、子の出生前に日本人父から認知の届出がなされている場合に限り、出生届(国籍留保届)を出すことで子は日本国籍を取得できます。

Koko

生まれてくるお子さんの国籍がどうなるのかわからない場合は、各国の日本国大使館・総領事館に問い合わせることでも、ある程度の情報は得られますよ!

「日本国籍を留保する」とは?

日本国外で生まれ、出生によって日本国籍と同時に外国籍を取得した子については、日本国籍を留保する意思を表示しなければ生まれつき日本国籍がなかった扱いになってしまいます。

そもそも「日本国籍を留保する」というのはどういうことなのでしょうか。

「留保」という言葉は日常生活ではあまり聞かない言葉ですが、法律でよく使われる用語で、「義務や権利を引き続き保持する」という意味です。

重国籍を認めていない日本でも、出生により日本国籍と外国籍の重国籍となった場合については一定期間重国籍であることを認めています。

「日本国籍を留保する」というのは、「国籍選択時までとりあえず日本国籍をキープする」という意味になります。

いつまで国籍留保できる? 国籍選択期限は?

生まれつき重国籍の場合は、20歳の誕生日まで日本国籍をキープできる(20歳の誕生日までに国籍を選択しなければならない)とされています。

Koko

大坂なおみ選手も22歳の誕生日までに日本国籍を選択されましたよね。
(注:2022年3月末までは、国籍選択期限は22歳の誕生日まででした。)

国籍選択期限については次の記事で詳しく説明しています。

2022年4月1日に日本の成人年齢が20歳→18歳に引き下げられたことにともない、国籍選択期限も22歳の誕生日まで→20歳の誕生日までに引き下げられました。

どんな国籍選択方法があるのか他の人たちはどの方法で国籍選択をしているのかそもそも皆きちんと国籍選択をしているのか、などについては次の記事で詳しく説明しています。

国籍選択期限までに国籍選択をしなかったらどうなるのか何か罰則があるのかパスポートが更新できなくなるのか、などについては次の記事で詳しく説明しています。

日本国内で生まれた重国籍者の国籍留保は不要?

日本国内で出産した場合は、国籍留保は不要

冒頭でみた国籍法第12条にある通り、国籍留保制度の対象者は国外で生まれたもの」とされています。

ですので、日本国内で生まれて、出生により日本国籍と外国籍の重国籍となった場合は、国籍留保の意思表示をする必要はありません。

ただ、出生届を出す時に日本国籍留保の意思表示をする必要がないだけで、国外で生まれた者と同様に「国籍留保者」であることに変わりはなく、国籍選択期限までに国籍を選択する必要があります。

余談: 日本国外で生まれた子だけ国籍留保が必要なのは不公平!?

同じ父母から生まれても、(里帰り出産も含めて)日本で出産すれば日本国籍留保の届出をしなくても重国籍でいられるのに、日本国外で出産し3ヶ月以内に日本国籍留保の届出をしなかったら生まれつき日本国籍がなかった扱いになってしまう...

私が最初にこの事実を知った時、

Koko

日本で生まれたら、親の意志にかかわらず重国籍者。
海外で生まれたら、親の意志によって重国籍かどうかが決まる(親が国籍留保のシステムを知らず届出しなかったら、日本国籍を失ってしまう)。
これっていいの?不公平じゃないの?

って思ったわけですが...

もともと、国籍法12条に定められた「国籍留保制度」って重国籍解消のための制度なんですよね。

国籍法12条は「実効性のない形骸化した日本国籍の発生防止及び重国籍の発生防止・解消」を目的として作られた法律なんです。(参考:平成25年1月22日判例

「国外で生まれた」=「生活の基盤が日本以外にあって、日本とは密接な結びつきがないかもしれない」から「本当に日本国籍を留保したいという意思表示をする人だけに日本国籍留保を認めましょう」ということなんですよね。

国籍留保制度があることで、「3ヶ月以内に出生届(国籍留保届)を出さなければいけないことを知らなくて、子供が日本国籍を取得することができなかった」という、同じミックスの子をもつ親として胸が痛む話を耳にすることが時々あります。

この制度が「日本と密接な結びつきのない」重国籍者数の抑制につながっていることは確かではありますが...

どうやって国籍留保の意志表示をするの? 届出期限や必要書類は?

「国籍留保届」という届出用紙はない

日本国籍を留保する意思表示はとてもシンプル、簡単です。

「国籍留保の届出をしないといけない」と色々なところに書いてあるので、「出生届」用紙とは別に「国籍留保届」用紙が存在しているのだろうと思っている人がいますが、「国籍留保届」という用紙は存在しません。

出生届用紙の「その他」の欄にひっそり「日本国籍を留保する」という欄があるので、ここに署名・押印したのでOKです。

出生届の「その他」の欄にある、日本国籍留保の意思表示をする署名・押印欄

日本で入手した出生届用紙には国籍留保のための署名・押印欄がありません。もし日本で入手した出生届用紙を海外で使う場合は、「その他」の欄に「日本国籍を留保する」と書き、署名・押印すればOKです。

国籍留保の意思表示ができるのは誰?

父母が婚姻関係にある場合、「日本国籍を留保する」の欄に署名・押印することができるのは父または母です。

父母が婚姻していない場合(出生子が非嫡出子の場合)、「日本国籍を留保する」の欄に署名・押印することができるのは母のみです。

日本人父と外国人母が婚姻関係にない場合、子の出生前に日本人父から認知の届出がなされている場合に限り、出生届(国籍留保届)を出すことで子は日本国籍を取得できますが、日本国籍の留保ができるのは日本人父ではなく外国人母です。

国籍留保の旨を記載した「出生届」の届出先、届出期限、必要書類は?

届出先

管轄の大使館・総領事館の窓口や、大使館・総領事館が行う領事出張サービスの会場で直接提出するほか、郵送も可能です。

お急ぎの場合は、日本の本籍地役場宛に直接郵送することもできます。

Koko

私は、総領事館が遠かったので、長男の時は領事出張サービス会場で、次男の時は郵送で提出しました。
郵送する出生届(国籍留保届)の記載に間違いがないかどうか、職員さんに事前にチェックしてもらっていたので、安心して郵送できました!

届出期限

届出期限は出生から3ヶ月以内です。

ただ、この3ヶ月の数え方には注意が必要です。「3ヶ月」には出生日も含まれるため、届出期限はぴったり3ヶ月後の日付ではなく「3ヶ月マイナス1日」になります。

【例】出生日:2022年6月20日 → 届出期限:2022年9月19日

また、届出期限が土日に重なる場合、大使館・総領事館は土日は閉館しているため、届出期限は直前の開館日である金曜日になります。

【例】出生日:2022年6月19日(日) → 届出期限:2022年9月16日(金)

※届出期限は、本来なら2022年9月18日(日)になるはずですが、土日閉館のため、直前の開館日である金曜日になります。

開館日が基準となっているので、土日や大使館・総領事館の休館日に届出期限が重なれば、その直前の開館日が届出期限となるので注意しましょう。

Koko

大使館や総領事館では、その国の祝祭日だけではなく、日本の祝祭日のいくつかも休館日となっているので、注意してくださいね。

郵送で提出する場合は、出生届(国籍留保届)と必要書類が入った封筒が届出期限までに大使館・総領事館(または、本籍地役場)に届いていて受理されている必要があります。(消印有効ではありません。)

郵送で出生届(国籍留保届)を提出する場合の注意事項は別記事にまとめています。

必要書類

出生届(国籍留保届)提出の際の必要書類は、以下の通り。

提出先によっては、追加書類の提出を求められることがあります。

  1. 出生届(国籍留保届) 2通
  2. 外国官公署発行の出生証明書(または、医師作成の出生証明書)
  3. ②の和訳文(通常、大使館・総領事館にテンプレートあり。自分で訳してOK)
  4. 日本人親のパスポート

大使館・総領事館によっては、日本人親の在住国の滞在許可証の提出を求めているところもあります(「滞在許可証が提示できる」=「自己意思により在住国国籍を取得していない」ということなので、日本国籍を喪失していないことの証明になります)。

父母が婚姻していない場合(子が非嫡出子の場合)の、認知届を出すタイミングや必要書類、事実主義を証明する書類などについては、管轄の大使館・総領事館に確認してみてください。

国籍留保の事実は、戸籍にどのように記載される?

国籍留保の事実は、戸籍の「身分事項 出生」の項に次のように記載されます。

※母が管轄の総領事館に届けた例

【出生日】令和○年○月○日

【出生地】○○○国○○○県○○○○○市

【届出日】令和○年○月○日

【届出人】母

【国籍留保の届出日】令和○年○月○日

【送付を受けた日】令和○年○月○日

【受理者】在○○○○○総領事

※【届出日】と【国籍留保の届出日】は同日です。

Koko

さて、これでお子さんは「日本国籍留保者」となりました!
パスポートの手続きなどでは「日本国籍保持者」と「日本国籍留保者」は同様に扱われますのでご安心ください。

もし国籍留保を忘れたらどうなる?

3ヶ月以内に国籍留保しなければ、出生時にさかのぼって日本国籍を失う

海外で出生した子供の場合、出生から3ヶ月以内に出生届(国籍留保届)を出さないと、子は、出生時から日本人ではなかった扱いになります。

国籍留保が必要なケースだったのに、3ヶ月以内に出生届(国籍留保届)を出しておらず、出生から3ヶ月が経過してしまった場合は、出生届を受け付けてもらえなくなります(海外で受け付けてもらえないのはもちろん、日本の本籍地役場でも受け付けてもらえません)。

出生時にさかのぼって日本国籍を失うため、戸籍には何も記載されません。

やむを得ない事情があれば3ヶ月の届出期限を過ぎても日本国籍留保が認められる?

例外的に、出生日から3ヶ月を経過していても、自然災害などで長期間にわたり交通や郵便が完全にストップしてしまった場合など、個別に審査した上で、出生届が受理されて日本国籍が認められる場合があります。

ただ、

「忙しくて・・・」

「産後の肥立ちが悪くて・・・」

「3ヶ月以内に国籍留保しなければいけないことを知らなくて・・・」

などというのは、出生届を3ヶ月以内に出せなかったやむをえない事情としては認められません。

よっぽどのことがない限り例外は認められない、と思っておかれた方がいいです。

出生届の届出人になれるのは原則として父母(外国人可)ですが、やむをえない場合はその他の人でも届出人になれます。

郵送でも届けられますし、代理人が持参することもできるのですから、なんとしてでも3ヶ月以内に届けられるよう、事前準備をし、早め早めに動きましょう!

日本国籍の再取得はできる?

万が一3ヶ月以内に出生届を提出できず、お子さんが日本国籍を喪失してしまった場合には、

  1. お子さんが未成年(2022年4月以降は成人年齢の引き下げにより、18歳未満)
  2. 日本に住所を置いて生活している

という2つの条件を満たせば、住所地を管轄する法務局に届出することによって、日本国籍を再取得できます(国籍法17条1項)。

①の条件について → 日本国籍再取得の届出時に成人(18歳以上)になっている場合は、簡易帰化(国籍法第8条)によってのみ日本国籍を取得できます。

② の条件について → 日本入国前に日本の長期滞在ビザを取得します。「日本に住所を置いて生活する」とは「永続的に日本に居住する意思をもって生活の本拠を有している」という意味であり、例えば、観光や留学目的での滞在時には、日本国籍再取得のための届出はできません。(6ヶ月以上住む必要があると聞いたことがありますが、詳しくは法務局にご確認ください。)

日本国籍留保 (二重国籍) のメリットは?

最後に、お子さんが日本国籍を留保するメリットを、思いつく限り、列挙してみます。

(ささいなことも、人によっては「そんなのどうでもいいよ」と言われそうなこともありますが...)

  • 日本で勉学、就労したくなった時、日本の医療を受けたくなった時など、日本に長期滞在したくなった時にビザを取得する必要がない。
  • どんな状況下でも日本に入国できる。
    • コロナ禍で、日本人と一部の特別な事情がある外国人にしか日本入国が認められないという未曽有の事態になりましたが、こういった事態でも日本国籍を持っていれば日本入国を拒否されることはありません。
  • 「世界最強のパスポート」「国境を一番越えやすいパスポートを持てる。
    • ご参考までに、シンガポール、日本に続く(または日本と同位の)上位25ヶ国(北米、ヨーロッパ、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)のパスポートで186~190の国・地域にビザなしで渡航、短期滞在できるので、これらの国のパスポートをお持ちなら大差はないですね...(ちなみに、中国は80、タイは79の国・地域にビザなし渡航・短期滞在が可能)
  • 有事の際に、日本政府、日本国大使館・総領事館に頼ることができる。
  • 日本国籍を持つ者だけが就ける職業・役職に就ける。
    • 日本の外交官、公職政治家、公証人など、国籍条項が規定されている職業・役職に就けます(国籍条項が規定されている職業・役職について詳しく知りたい方は、ウィキペディアの「国籍条項」へ)。ただし、重国籍の場合、外国籍を離脱しなければならない場合があります。
  • 18歳になったら日本の選挙権が得られ、海外からも日本の国政選挙に投票できる。
    • 国外に長く居住すると選挙権がなくなってしまう国が結構ありますが、日本の場合、海外に何十年住んでいようと日本の選挙権があり、海外にいながら日本の国政選挙に参加できます。
      (ただし、在外選挙人名簿登録が必要。海外在住者が日本の選挙に参加する方法について知りたい人はこちらの記事をお読みください。)
  • 海外に住んでいても、小学1年生~中学3年生の日本の教科書(全教科)を無料でもらえる。
    • 教科書代も、日本→在住国にある大使館・総領事館までの教科書配送料もすべて無料。海外で日本語を勉強するお子さんの強い味方です。
      (ただし、申込が必要。海外在住者への教科書無償配布について知りたい方はこちらの記事をお読みください。)
  • 日本の国民年金に任意加入できる。
    • 海外在住の日本国籍保持者は、日本に住民登録がない場合(住民票を抜いている場合)は国民年金加入義務はありませんが、希望であれば国民年金に任意加入できます。任意加入により、将来の日本の年金受給額を増やしたり、海外在住中の病気や事故による障害、死亡に対する年金を受け取ったりすることができます。
  • 子の日本国籍を留保することで、子に「複数の国籍から選ぶ」という選択肢を与えてあげられる。
    • もしかしたら、国籍選択制度が今後改正され、選ばなくてもよいなんてことになるかもしれません!?
  • 子の日本国籍を留保することで、孫にも日本国籍取得の可能性を残せる。
  • 日本人、日本にルーツを持つ者としてのアイデンティティを育む一助となる。

最後に

ひと昔前の情報入手手段が限られていた時代ならまだしも、いまだに「3ヶ月以内に出生届を出さなければいけないことを知らなくて、子供が日本国籍を取得できなかった」という方がいらっしゃるのを耳にしたり、ネット上で目にしたりする度に、残念でなりません。

出生届を3ヶ月以内に出さずに日本国籍を取得できなかった場合は、未成年のうち(18歳になるまで)に一定期間日本に住めば比較的簡単に日本国籍を取得できる道は開かれていますが、仕事や生活のベースが海外にある場合、家族で日本に移り住むというのは簡単なことではないですよね。

「子供に日本国籍を取得させたい」という方は、手続きを忘れた(誤った)せいでお子さんが日本国籍を失ってしまうことがないよう、事前に情報収集して、正しく国籍留保の手続きをしてくださいね。

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